老朽化マンション、これが究極の修繕だ! 相場の2倍以上!1戸245万円の負担は高いのか
何しろ、近隣5キロメートル圏に自衛隊の厚木基地があり、マンションの上空は自衛隊機の飛行ルートに当たる。6~7割の住戸が防衛省からの補助金で防音サッシを入れていたが、年数を重ねるとともに性能は劣化。飛行機の編隊が通ると、テレビの音も聞こえない状態。さらに、一部の住戸では、サッシからの雨漏りが深刻で、大雨のたびに雑巾を当てないといけないありさまだった。
「35年前になかった技術を導入すれば、もっと快適な生活ができるはずだ」
そんな合言葉の下、2012年10月に大規模修繕の具体的な検討がスタートした。だが、区分所有者の合意形成なくして、修繕計画は前に進まない。「理事会が考えていることをすべてオープンに伝えて、住民同士の議論を高めていくことを最優先に考えた」(当時、理事長を務めていた水谷隆さん)。
そのための重要なツールの1つが広報紙だ。これまでも理事会の議事録を住民向けに作成していたが、文字情報だけだった。そこで、あらたに編集委員会を設置。大規模修繕に向けた議論の内容を住民に広く知ってもらうため、従来よりもビジュアルに工夫した広報紙を作り始めた。
それでも、創刊当初はまだ文字だらけ。プロのイラストレーターや編集のセミプロだった住民をスタッフに引き入れることで、徐々に内容を磨き上げた。「私の趣味」など、住民同士で話題が広がるようなコンテンツも取り入れていった。最終的には「発行が遅れると、住民から『いつ出来上がるんだ?』と聞かれるまでになった」(水谷さん)という。
修繕カルテで視覚的に訴求
合意形成のためのツールは、ほかにもあった。建築士の小野さんの薦めで作った、修繕カルテだ。
これまでの2度にわたる大規模修繕では、どの箇所にどのような処置を施したのか、記録を残していなかった。そこで、3度目の大規模修繕に当たって、現在の不具合箇所をすべて図面に描き出し、その原因を調査。診断結果を再び図面に落とし込んでいった。こうすることで、自分たちのマンションが置かれている状況を住民に視覚的に訴えた。
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