老朽化マンション、これが究極の修繕だ! 相場の2倍以上!1戸245万円の負担は高いのか

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大規模修繕の意味について、小野さんはこう語る。「建築物はオーダーメードだから、ある意味、試作品の状態で世に出る。それを大規模修繕によって育てて、次の世代に受け継いでいくことが重要だ」。

こうした努力の甲斐もあって、検討開始から1年足らずで施工業者との契約までこぎ着けた。とはいえ、理事長だった水谷さんたちの仕事はこれで終わりではなかった。

「直す」だけじゃない修繕

工事期間中の毎朝、水谷さんをはじめとした数人が、交代で工事現場の巡回と打ち合わせを続けた。彼らが仲介役となり、住民、工事業者それぞれの困り事や要望を聞き、伝えて回った。週に1回は建築士を交え、技術的な問題に対応してもらった。「修繕工事が終わってから『あの時、言ってくれればよかったのに』と言われないようにしたかった。そのために、風通しをよくする必要があった」(水谷さん)。

週刊東洋経済2014年12月6日号(12/1発売)の特集は「マンション防災修繕管理 完全マニュアル」です。大地震は間違いなく起きる。多くの住民が住むマンションは自助、共助のバランスで災害対応力を高める。最前線を追いました。

こうして、3度目の大規模修繕工事は2014年7月に完了した。具体的な検討開始から2年足らず。多額の借り入れをしたうえで多岐にわたるメニューを実施した大規模修繕としては異例の早さだ。

小野さんの薫陶を受けて、水谷さんたちのマンションに対する考え方は大きく変わったようだ。これまでの長期修繕計画をリセットし、「長期事業計画」を策定。ただ単に「直す」だけでなく、マンションに若い人が入ってきてくれる仕掛けを作れないか、検討を始めている。

「集会室の壁を取り払って、テラスを作れないかと考えているんだ。そうすれば、中庭の大きな桜の木で花見ができるからね」――。水谷さんたちの夢は膨らむ一方だ。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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