──ご覧になった300カ所以上のトイレをジャンル別に分けるとどうなりますか。
マリトモ:大きく3つに分けられます。1つは「審美性」。いわゆるきれいないトイレです。最近、できたショッピングセンターなどのトイレは洗練されています。
渋谷ヒカリエの女性用トイレは「審美性」の典型ですね。フロアごとに異なるコンセプトで展開していて、きれいめファッション、カジュアル系など、その階のテイストにトイレを合わせている。ここ数年にオープンしたショッピングモールは、こういったバリエーションに富んだトイレ作りに積極的に取り組まれています。京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンターも、11カ所のトイレがすべて異なるコンセプトで作られています。
2つ目は「機能性」に特化したトイレ。多機能トイレやオストメイトトイレ、こどもトイレ、親子トイレなどです。中でも高速道路のサービスエリアは、早い段階からそういったトイレの必要性に注目して着手されたようで、最も多機能です。
──こどもトイレと親子トイレの違いは?
マリトモ:こどもトイレは子どもがひとりで使えるトイレ、親子トイレは親子で並んで使えるトイレです。最近の傾向として、男性用トイレに親子トイレができてきました。女性用トイレに男児トイレはあるけど、男性用トイレのほうにも少しずつ設置され始めています。“イクメン”が増えてきたんでしょう。
──トイレから社会が見える。
マリトモ:3つ目は「エンターテインメント性」。何かしら「珍」要素があるものや、音や光の演出があるゴージャス系など、人を楽しませる工夫が散りばめられているトイレです。
トイレの密かな“女尊男卑”問題
──「エンターテインメント性」で感動したトイレはどこですか。
マリトモ:まず水族館のようなトイレです。兵庫県明石市の海沿いにあるカフェなんですが、壁から天井まで魚が泳いでいて、店主の方が数千万円かけて作った渾身のトイレです。
ただし女性専用なんですよ。男性もお店の人にお願いすれば、用は足せないけど見学はさせてもらえるそうです。
──見学だけ?
マリトモ:ここのトイレに限らず、ほとんどの商業施設のトイレは、女性ばかり優遇されているのが問題だと私はつねづね考えています。せめて男女共用トイレにすればいいのになあと思います。
──男性用トイレを女性は見る機会がなかなかないので、そういう問題に気がつかないです。
マリトモ:日本の中で、男性用トイレと女性用トイレは全然事情が違うんですよ。女性用トイレはスペースがどんどん広くなっているのに、男性用トイレのスペースはこの10年間、あまり拡張されていないようです。
数年前に男性用小便器の上に洗面台をつけるという画期的なトイレが登場しまたした。節水効果があって画期的な反面、男性用トイレのスペースをもっと狭くしようという意図にも受け取れる気がします。
女性も男性も同じようにストレスを受けているのに、女性だけトイレでのほほんとできて、男性は手を洗う場所すら縮められているのかと思うと、女性としても何だか申しわけない気持ちがします。女性用のパウダールームに対抗して、ヒゲが剃れるスペースぐらいあってもいいかもしれません。
──男性用トイレがそんなに圧縮されているとは知りませんでした。
マリトモ:男性しか知らない言葉があるんですよ。「一歩前へ」という言葉。
──「一歩前へ」?
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