トヨタが“ぶつからない車"で本気を出す理由 なぜ今、自動車の安全技術が注目されるのか

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普及へのキーワードは「ITSとの協調運転」

一方の中型車以上向けのシステムには、ミリ波レーダーと光学式単眼カラー広角カメラを用いた。車両だけでなく歩行者も認識する。車両に対しては時速10キロメートル~最高速度域まで作動し、時速40キロメートル分の速度を低減しつつ、歩行者に対しては時速10~80キロメートルまで作動し時速30キロメートル分の速度を低減する自律自動ブレーキを採用する。

さらにこのシステムにはオプション装備として、760MHzの電波を用いて道路と車両の間で通信を行い、見通しの悪い交差点などで対向車や横断歩道の横断歩行者などとの衝突や接触を回避する「右折時注意喚起」機能や、前走車と通信することで「定速走行・車間距離制御装置」の加減速制御がより緻密に行える「通信利用型レーダークルーズコントロール」も織り込まれる。

その先に見据える「自律自動運転」

「衝突被害軽減ブレーキ」技術のはるか先には「自律自動運転」という世界がある。車両にあらゆるセンサーを装着し自車周囲の道路・交通環境を検知しながら、最適なアクセル/ブレーキ/ハンドル操作をクルマが自律的に行なう技術だ。

トヨタだけでなく日産自動車、本田技研工業、ゼネラルモーターズ(GM)、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなど世界中の自動車メーカーがこぞって技術開発に取り組んでいるが、技術担当者が口々に語るのは、「人間不在の自律自動運転は目指していない」ということだ。

現在の技術でも、例えば「Googleカー」が示すように自動車メーカーでなくとも自律自動運転技術を成立させることは可能だ。しかし、既存の道路インフラにフィットする自律自動運転を考えた場合、車両に搭載したセンサーだけで行うには物理的な限界点があるのもまた事実である。

「衝突被害軽減ブレーキ」にはじまり、こうした運転操作の部分的な自動化の普及によって「自律自動運転」の世界が次の扉に控え、それがあたかもすぐに開くかのような錯覚にとらわれがちだが、その前段階として存在する「人間と機械の協調運転」を理解し受け入れることが「自律自動運転」の正しい普及を後押しすると考えている。

トヨタは自律自動運転の開発目的を、交通事故ゼロ/環境負荷低減/超高齢社会への対応であると言い切る。「衝突被害軽減ブレーキ」にはじまる予防安全技術、電波を用いた通信型の安全技術、そしてそれらを礎にした自律自動運転の存在。こうした一連の流れの主体は常に人間であると同時に、自律自動運転は人の機能拡張であるという認識を今からもつことが求められているのではないだろうか。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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