二つ目の理由は、国交省による「ASV(先進安全自動車)推進計画」の普及活動が実を結び安全技術に対するユーザーの関心が高まったことに加えて、自動車メーカーやサプライヤーの努力によって標準装備とするクルマも増えてきたことにある。
また、オプション装備の場合でも機能に制限がつくものの実質3万円台から選択できるようになったことも普及の追い風になっている。軽減できる被害には限界があるが、そこを理解した上で自動車保険に付帯可能な特約をプラスするイメージで「衝突被害軽減ブレーキ」を選択するユーザーも増えてきた。
11月26日、トヨタが発表した予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」。これは時速10キロメートルの低速域から最高速度域に至るまで衝突回避を支援、もしくは被害軽減を狙った複数の技術の総称だ。
トヨタが及び腰だったワケ
実は、トヨタは、この分野の技術開発においてはダイムラー社と並びトップランナーとして君臨してきたが、こと市販車への導入となると動きが鈍かった。2006年には世界最高水準の「衝突被害軽減ブレーキ」を高級車ブランド「レクサス」の最上級車「LS」に導入しながらも、センサーや制御技術のコスト高を理由に低価格帯の車種への搭載は及び腰だった。
「安全技術の導入には高い精度と、それに見合う品質を確保しなければなりません」と、トヨタ自動車の専務役員である吉田守孝氏は常々語っていたが、今回のトヨタの取り組みは厳格な精度と品質を確保した上で、「普及に大切な低価格を実現する」(トヨタCSTO補佐の葛巻清吾氏)というから、まさしく満を持しての導入といえる。
しかも2017年末までに、日本・北米・欧州の各地域においてほぼすべての乗用車に設定し、しかも全グレードで選択可能とする。さらに激増するアジア新興国向けの予防安全装備も開発中だ。やるからにはトップを狙うという姿勢に、普及にかけた本気度合いが伺える。
トヨタの「衝突被害軽減ブレーキ」には、主にコンパクトカー向けの仕様と、中型車以上向けの2種類が用意される。コンパクトカー向けは赤外線レーザー+光学式単眼カラーカメラを用いて、時速10~80キロメートルで作動し時速30キロメートル分の速度低減が見込める自律自動ブレーキを採用した。
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