格闘家のジム経営は「ラーメン屋」そのものだ プロって何だろう?格闘家・青木真也と語り合った

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あおき・しんや●1983年静岡県生まれ。小学生の頃より柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜。早稲田大学在学中に柔術を始め、2003年のDEEPフューチャーキングトーナメントで優勝。2005年より修斗に参戦。世界王座を戴冠。早大卒業後、警察官(静岡県警)となり警察学校に入るが格闘技への想いが強く、2カ月で退職。その後、主戦場をPRIDEに移す。DREAMでは改めて驚異的な極めの強さを世界にアピール。2012年7月東南アジアを中心に活躍するONE FCと契約。世界屈指のグラップラーとして現在も活躍中。

常見 確かにプロレスの試合はともかく、格闘技の試合ではずっと勝てていない「ゾンビ状態の格闘家」は存在しますね。

青木 なぜそれでも彼らが引退しないかというと、「現役選手であることをやめられない」からです。単純に「格闘技がやりたい」というだけでなくて、現役を続けてさえいれば、「小遣いをくれる大人」もいますし、常見さんのようなメディアに出演されている方と交流することもできます。

常見 現役であることの「旨み」を知っているからこそ、現役選手であることから「抜け出せない」わけですね。

青木 そうです。僕はそんな状態で、格闘技を続けたくはありません。なぜならそれは勝負にこだわるはずの格闘家が「負けの重みを感じなくなった」状態だからです。負け続け、倒され続けても何も感じることなく、戦い続けるゾンビに、僕はなりたくないです。どこかで、「自分」で引退を決断しないといけないと思います。

常見 引退を決断した格闘家のセカンドキャリアとしては、ジムを経営することが多い印象です。例えば青木さんの師匠の中井祐樹さんも「パラエストラ」というジムを経営されていますよね。

青木 確かにジムの経営は「王道」です。僕は格闘家のジム経営は「ラーメン屋」に似ていると思っています。

常見 面白い視点ですね(笑)。

青木 開業資金は500万円ほどで、マットをひけば運営は一人でもできる。その後に人気が出てジムのブランディングができたら、他に「店舗」を出すという流れは、「ラーメン屋」そのものです。

タニマチ文化とその不健全さ

常見 まさにラーメン屋(笑)。私はスポーツ選手がセカンドキャリアに活用できる資源は、「スキル」と「人脈」「知名度」だと思います。「スキル」に関しては、教室を開いて教えることや試合の解説をすることに生かせます。

一方で「人脈」に関しては、飲食店を経営している人が多いと思います。後援者である「タニマチ」が飲食店の開業資金としてならば、お金を出せるというのも飲食店をはじめる大きな理由ですね。「知名度」はテレビ出演などですが、プロレス、ボクシングはともかく、それ以外の格闘技で、タレントで成功した人はあまりいませんね。

青木 確かに格闘技は「タ二マチ文化」です。しかし僕にはタニマチのような人はいません。なぜならそれはあまりにも「不健全」だと思うからです。自分が主役だと思ってフリーランスとして生きているつもりなのに、タニマチがいると「コントロール」されてしまいます。

常見 なぜ彼らはタニマチになるのでしょうか。昔から大プロレス好きだから、タニマチになる人々はいますよね。

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