新庄BIGBOSSが相手チームを「挑発」する納得の訳 その言動は単に奇抜なものではなく示唆に富む

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だからこそ、より大きなインパクトを与えられる開幕戦で、その印象を深めることが重要なのでしょう。その意味で面白いのはBIGBOSSが監督就任会見のとき、「『開幕投手が誰』とかまったく決めてないし、今年入ったドラフト1位の子が開幕投手で投げているかもしれないし、そういった争いをどんどんさせたいと思います」と前振りしていたこと。

「さすがにそれはないのでは」と思わせておきながら、その約4カ月後、BIGBOSSが選んだのは「ドラフト8位の選手」、しかも「2イニングしか投げていない投手」でした。最初に与えるインパクトとしては強烈なだけに、他チームにこれまで以上の警戒心を抱かせたのではないでしょうか。

それは「興行」という意味でのパフォーマンスも同様。福岡での開幕戦だけでなく、北海道の本拠地開幕戦でのパフォーマンスも、「最初の印象が肝心」というスタンスで、強烈なインパクトを与えてくれるでしょう。

断トツの最下位予想にも笑顔の理由

BIGBOSSは「パリーグは5強1弱」とまで言われ、順位予想でも大半の野球解説者が最下位にしたことについて、「ありがとうやね。選手たちは『オレたちは若いけど、見てろよ』っていう気持ちになる」などと明るく語っていました。この発言はBIGBOSS本人の悔しさによるものではなく、若い選手たちを気づかってのコメントではないでしょうか。

BIGBOSSは約2週間前、インスタグラムに若手選手が活躍した多くの新聞紙面を撮った画像をアップし、「監督就任会見から常にメディアに出てきた意味がここにある!! まずは僕が目立ってその後選手達が活躍すればこうやって全国のスポーツ新聞の1面に取り上げられ始める!!」などとコメントしていました。

また、「バース・デイ」では、「ゴールデングラブ賞」を10度獲得するなど守備にこだわってきた理由について、「打つのは個人競技、守るのは団体競技。ただピッチャーを、チームを助けたいから」と語っていました。

スポーツ界だけでなく、ビジネスシーンなどにおいても、これほど利他的なタイプのリーダーにはなかなかお目にかかれません。何も考えていないように見えて、実は深く熱く考え、周囲の人々を楽しませようとしているのがBIGBOSSという人物。言動の真意を理解するためには、見る側の私たちもいろいろ考える必要性があり、そこにこれまでの監督にはない面白さがあります。

「経験がないこと」「見たことがないものを見せること」を武器にしたマネジメントという意味ではビジネスシーンでも参考になるだけに、開幕後のBIGBOSSに注目してみてはいかがでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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