ウクライナ、インフレ、コロナ…日本経済の今後 世界的な変化だけではない日本低迷の根本原因

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新型コロナ対策で問題となった「医療逼迫」もその一例だ。病床数や医師数は他の先進国並みであり、診療報酬制度で守られた公的インフラのはずだ。だが、8割は個人病院でほとんど協力は得られず、コロナ患者を受け入れた病床は全体の4%強にすぎない。政府は公的病院ですら満足に動員できず、補助金を幾重にも積み増してお願いに終始する姿は異常である。

先進国の潜在成長率は総じて低いが、コロナ禍前の試算でアメリカは2.0%、ユーロ圏は1.5%で、日本は2006年以降1%を切る水準のままだ。潜在成長率を押し上げるには、民間活力が十分に発揮され、技術革新が起き、それに適応した資本や労働の投入が行われなければならない。

ところが、大きな改革は行われず、アベノミクスの基本は金融緩和と財政拡張だった。モルヒネやカンフルに例えられるこうした政策は、不況期に短期で行い、完全雇用が実現できればやめるべきものだ。恒常化すれば効果は消えていき、副作用が大きくなる。低金利環境や税控除、補助金などの助けなしにはやっていけない低採算企業や赤字事業を温存してしまう。

停滞から抜け出せないまま

アメリカは一定の財政規律を維持しているが、コロナ禍に対しては、未曾有の大盤振る舞いを行った。個人の失業手当などを厚くする政策を取った結果、20年からコロナ後の新たな需要を見据えた起業が爆発的に増え、需要や雇用の活況につながっている。

片や日本では雇用調整助成金によって既存の企業を守り、企業に雇用を維持させた。アフターコロナでは、アメリカの潜在成長率は再び上昇し、日本のそれは低迷の続くことが予想される。

さらに、日本を直撃する世界的な変化が起きている。冷戦終結後に続いたグローバル化、自由市場拡大の潮流は止まった。中国やインドなど異なる価値観の国家が台頭し、ロシアの武力による反撃も起き、経済のブロック化が避けられない。また、脱炭素だけでなくコロナ禍も環境問題であり、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からの規制強化が進む。

資源を輸入に頼る日本には、ブロック化、規制強化は輸入物価の上昇という形で影響が大きい。日本では販売価格へ十分に転嫁することは難しく、交易条件の悪化による海外への所得流出が生じる。

これは企業と家計が痛み分けで負担する。企業収益が削られ、家計においても消費者物価上昇率を賃金上昇率が下回ることで、実質可処分所得が減り、消費が抑制されてしまう。円安が進んでいることも家計には負担だ。

2022年度に脱コロナが進めば、サービス消費などが復活し、大幅に高まっていた貯蓄率が下がる形で消費は回復するかもしれない。ガソリン補助金のような追加の財政支援もありうる。しかし、それらが一巡すれば、先行き不安から消費は再び低迷し、潜在成長率を一段と低下させるおそれもある。

政府が取り組むべきは、規制改革を行って民間の自発的イノベーションを促すこと、医療を含めた社会保障制度を改革して財政の持続可能性を示し、消費者の将来不安を解消することだ。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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