冷凍食品を恨む43歳彼女を翻意させた2つの誤算 母が料理放棄、冷凍食品ばかりの幼少期を送る

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「べつに栄養が、とか、体に悪い、とか思っているわけじゃないんです。ただあまりにもたくさん食べてきたせいで食べ飽きてしまって、どうしてもできあいのものを体が受けつけないんです」

その後、地元の高校を卒業し、真理子さんは関東の大学に進学。一人暮らしを開始すると以前にも増して料理に傾倒していくことになる。

「当時はとにかく『料理を覚えないと!』という気持ちが強い時期でした。大学の近くに住んでいたこともあり、友達がやたらと来て、いつも手料理を振る舞っていましたね。かつて自分が飢えてたからこそ、飢えてる人を見ると『なんとかしなきゃ』って思っちゃうんですよ(笑)。

評判が良かったのは酢豚とか、茶碗蒸しとか、スパイスカレーとか……。おかげで普通の大学生のはずなのに、やけにエンゲル係数が高かった」

こうして、「やたら料理してる謎の存在」として狭い範囲で有名になった真理子さん。

よく食事を振る舞っていた男友達の実家に遊びに行った時、その母親から「いつもありがとうね」と改まった態度で言われ、「彼氏じゃないんです」「え、そうなの!?」という会話をしたこともあったというから、いかに熱心に自炊していたかがわかる。

「料理をしない家に育ったせいか、『料理を作れる人が偉い、最高だ』という価値観があるんです。今振り返ると少し極端だったかもしれないと思うけど、当時はただただ必死で、料理をすることで自己肯定感を上げている面すらありましたね」

考え方が変わった「2つの誤算」

精神的に飢えた幼少期を経験したことで、自炊に強いこだわりを持つようになった真理子さん。やや極端と思えなくもない考え方だが、大人になるなかでそれも変わっていったよう。

きっかけとなったのは、大きく分けて2つ。1つめは、「育児しながらの共働き生活の忙しさ」だ。

「子どもを育てながら働いていると、手作りだけじゃとてもじゃないけど、日々の生活が回らないことが身に染みてわかってきたんです。だから、まず茹でるだけの枝豆のように、原材料に近い冷凍食品から試していって、少しずつ受け入れられるようになりました。

そもそも加工食品が苦手なのは私だけで、夫や子どもたちは喜んで食べるんですよね。お弁当に冷凍ハンバーグとか入れると普通に喜ぶんですよ。そういうのを見るうちに『自分さえ食べなければ、それでいいか』と思えるようになりました」

次にもう1つの理由だが、こちらは嬉しい誤算だった。「夫も料理をするようになった」というのだ。

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