冷凍食品を恨む43歳彼女を翻意させた2つの誤算 母が料理放棄、冷凍食品ばかりの幼少期を送る

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「私は自分のために料理を覚えたので、人に『作ってほしい』と言われるのには『なんか違うな』と思うタイプなんです。だから、結婚後はあえて料理をしないこともあって。夫が料理するのを待つというか(笑)。そうしたら、夫も少しずつ作るようになったんです」

やや珍しい幼少期を経たことで、真理子さんが「料理を作れる人が偉い、最高だ」という価値観を持つようになったのは前述したとおりだ。

それゆえ、夫が料理をすると心の底から褒めることができ、夫もそれが嬉しく、ますます料理するようになる……という好循環もあったという。

「結果、今では料理の分担は夫婦で半々ぐらい……いや、夫のほうが多いくらいかもしれません。カップラーメンしか作らなかった食に無頓着な夫が、いまや油淋鶏とかホワイトソースからのグラタンとか作るので超尊敬してます。

30年近く『料理ができないとダメだ』と常に思ってました。でも今は、料理しない自分も認められるようになったというか。今になってやっと食べ物の恨みが薄れてきた感じです。時間はめちゃくちゃかかりましたけどね」

喜劇王・チャップリンの有名な名言に「人生は近くで見ると悲劇だが、 遠くから見れば喜劇である」というものがある。

学生時代の真理子さんはただただ必死だっただろうし、「料理しない自分」も許せるようになった今だからこそ明るく話せる話なのも間違いないが、まさにチャップリンの言葉のようなエピソードだと感じずにはいられない筆者であった。

本連載「忘れえぬ『食い物の恨み』の話」では、食べ物にまつわる、「近くから見ると悲劇、 遠くから見れば喜劇」な体験談をお待ちしております。ご応募はこちらのフォームからお願いします。
岡本 拓 編集者・ライター

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Taku Okamoto

編集者・ライター。早稲田大学文化構想学部卒。ソーシャルゲーム会社(半年)、某ネットニュース編集部(4年)を経て、フリーランスに。2021年12月から東洋経済オンライン編集部のメンバー。「奨学金借りたら人生こうなった」「チェーン店最強のモーニングを探して」などの連載を担当。会社四季報では外食業界を担当。

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