LINE森川社長、「交渉はジャズに似ている」 「交渉は創造である」を読んで考えたこと
本書『交渉は創造である』の著者、マイケル・ウィーラー教授は、世界中で活躍している交渉の達人たち(スポーツ・エージェント、投資家、外交官、映画プロデューサーなど)の手法を二十年以上にわたって研究してきた、交渉術の第一人者です。彼は、研究結果をもとに独自の交渉術を確立。本書では、そのテクニックの数々が紹介されています。
この本の中で印象的なのは、そうしたテクニックの前提として、著者がまず「交渉はジャズに似ている」という認識を提示していることです。
よく交渉は、様々なものに喩えられます。例えば、ギャンブルやボードゲーム。じっくりと相手の戦略や状況を見極めることや、何手も先の状況を見通す力が必要なのは、確かに交渉と似ています。麻雀やポーカーのように相手の持ち手がわからないときもあれば、反対に将棋や囲碁のようにそれが見えている場合もあります。他には、スポーツに似た一面もあるでしょう。テニスや卓球のようにラリーを繰り返すときもあれば、サッカーのようにカウンター攻撃を仕掛けるときもあるからです。
しかし、本書で著者は、ジャズになぞらえて交渉を語っています。私も大学時代、ジャズをやっていたのでわかりますが、確かにジャズほど、交渉の本質を語る上で的確なものはないでしょう。相手の流れを自分の流れに変えていく力。臨機応変なアドリブ。そしてそれらをもとに、相手と最高のハーモニーを奏でること。こうした、これまでの交渉術が取りこぼしてきた多くのものが、「ジャズ」というフィルターを通すことで、はっきりと見えてくるのです。
契約にも、国ごとに大きな文化の違い
私は、LINEという会社で様々な国の人たちと交渉をしています。その経験の中で、契約の仕方一つをとっても、国ごとに大きな文化の違いがある、ということを実感してきました。
例えば、日本の企業が相手である場合、合意の直前ギリギリまで交渉する、といったことはあまりありません。基本的には相手を信じ、契約書に「両社とも誠実に対応する」との文言を入れるだけ。もし、後に何か異論が出てきたとしても、そこでお互い「前向きに協議する」といった場合がほとんどです。
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