LINE森川社長、「交渉はジャズに似ている」 「交渉は創造である」を読んで考えたこと

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一方で欧米の企業と契約を結ぶ場合、そこでは「いつか必ずもめる」ということを前提に契約書を作ります。そのため、かなりの時間を費やして、事前にしっかりと交渉をするケースが多いです。ただ、やはりその分、契約後に何かもめ事が起きる、ということは比較的少ないと言えます。

アジアの企業と契約を結んだときには、契約書にある記載の解釈を、後に変えられてしまう、というケースがよくあります。そうした慣習は、変化にすぐ対応できる、という点では良いのですが、勝手に都合の良いように解釈され、結果的に騙されてしまう、ということもあり、一長一短といったところです。

このように、国によって約束や契約の仕方・解釈が異なるため、交渉のやり方は相手によって柔軟に変えていくことが重要になります。最初から素直で誠実な交渉をした方が良い場合もあれば、警戒しながらゆっくりと相手を見極めるべき場合もあります。

本書で著者は、交渉に入る前に、次の三つの問いに答えることが必要だと述べています。それは、「交渉するべきか」「タイミングは今か」「全てを懸けるべきか」の三つ。この中で、私が特に重要だと思うのは、二つ目の「タイミングは今か」です。

交渉において、急いで結論を出さなければならない場合には、それが相手に見透かされると、必要以上の妥協を強いられてしまうことになります。また、何がなんでも相手と合意しなければならない、といった状況では、こちらに不利な条件をいくつも飲まなければいけなくなるでしょう。そうならないためにも、強気でありながら柔軟に、かつ粘り強く交渉できるようなタイミングを見極めることが、とても大事なのです。

自分の提案の価値を高く見せる

10月の自社イベントで講演をするLINEの森川亮社長(撮影:尾形文繁)

ただ、交渉を成功させるために一番必要なことは、「こちらの提案に高い価値がある」と相手に認めさせることです。自分がどんなに良い提案をしていると思っていても、それはあくまで相手によって評価されるもの。だからこそ、あらゆる交渉では、自分の提案の価値を高く見せる努力が必要になるのです。

しかし、単純にその提案の外面を良く見せようとするだけではダメです。そうではなく、「相手にとって自分の提案はどんな価値を持っているのか」を自問自答し、それを深く理解すること――それができて初めて、自分の提案の価値を最大化することができるのです。そのとき、きっとその提案は、自然と最初の姿から形を変えているはず。これこそが、本書のタイトルでもある「創造」の核心です。

行き詰まる交渉のパターン、そしてそれを打破する方法など、本書にはビジネスを成功させるための多くのヒントが詰まっています。そのキーワードである「ジャズ」と「創造」は、交渉だけではなく、あらゆるビジネスシーンでも力を発揮するはずです。

森川 亮 C Channel 社長

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もりかわ あきら / Akira Morikawa

1967年神奈川県生まれ。2003年にハンゲームジャパン株式会社(後にNHN Japan株式会社、現LINE株式会社)入社。2007年、同社代表取締役社長に就任。2015年3月に退任し、顧問就任。同年4月に女性向け動画メディアを運営するC Channel株式会社を設立。

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