日産「フェアレディZ」が50年以上愛される理由 初代から新型まで、歴代モデルに見る変遷記

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スターロードが展示していたフェアレディZ(筆者撮影)
スターロードが展示していたフェアレディZ(筆者撮影)

当展示会では、ビンテージカーのレストアやパーツを扱う事業者により、国産旧車も数多く展示されたが、とくにフェアレディZの初代S30型や2代目S130型は、ここで紹介した車両以外でも、かなりの数が展示されていたのが印象的だった。現在ブームとなっている国産旧車の代表格としては、1968年に発売された日産「スカイライン」の3代目、通称「ハコスカ」が有名。また、1972年発売の4代目、通称「ケンメリ」も人気が高い。だが、あくまで個人的な印象だが、今回の展示車両だけでみれば、フェアレディZの方が目立っていたような気がする。

ジャパンダットサンサービスが展示していたフェアレディZ(筆者撮影)
T.C.Sグースが展示していたフェアレディZ(筆者撮影)

複数の事業者からの「ハコスカやケンメリは、あまりにも人気が高くなり過ぎた」といったコメントも、筆者の印象を裏づける。近年、どちらのモデルも、高まる需要増により中古車市場での流通台数がかなり減っており、おのずと価格も高騰。とくにハコスカは、1000万円を優に超える車体も多い。高価かつタマ数が少ないため、ユーザーが手に入れにくくなっているのだ。一方、S30型などの古いフェアレディZは、いまだに500万円台で購入できる車体もある。つまり、ハコスカやケンメリと比べ、より安価で手に入れやすいため、ユーザーからのニーズも増えてきているようだ。

ジャパンダットサンサービスのフェアレディZは510万円で販売されていた(筆者撮影)
T.C.SグースのフェアレディZは510万円で販売されていた(筆者撮影)

また、これも多くの業者が「S30型などの純正部品はいまだに入手できるものもある」という。よく、国産車は「生産終了から10年以上経つと純正部品が手に入りづらい」と言われる。そのため、古いモデルを維持したり、レストアしたりすることが困難な場合も多い。その点、フェアレディZは、いつまでも現役で走らせたい愛好家にとって、比較的維持しやすいことも、人気が高い理由のひとつであることがうかがえる。

歴代モデルと変らない“手の届くスポーツカー”

新型フェアレディZのリヤビュー(筆者撮影)
新型フェアレディZのリヤビュー(筆者撮影)

「いままでに世界で180万台以上を販売した」というフェアレディZは、「世界で最も売れているスポーツカーのひとつ」だと言われている。その人気の秘密は、高性能なだけでなく、これも初代S30型の説明で述べたとおり、ライバル車と比較して比較的リーズナブルな価格を実現したことも要因だろう。近々発売される新型モデルについても、日産は「歴代モデルと同様の手が届くスポーツカー」だと言及している。

実際に、先行で国内販売されるプロトスペックの価格(税込み)は特別仕様車ながら696万6300円。同じ日産のスポーツカー「GT-R」は、現在受注を終了しているものの、安いグレードでも1000万円を超えることを考えれば、かなりの安さだ。多くのユーザーに手が届くスポーツカーであるという点も、フェアレディZがこれだけ長く愛され続けている理由のひとつなのではないだろうか。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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