中国「EV充電インフラ」整備加速に収益性の壁 公共充電スタンドの運営は補助金頼みが実態

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充電装置は新エネルギー車の普及に必要不可欠なインフラだ(写真は中国の充電スタンド運営大手、特来電新能源のウェブサイトより)

中国では電気自動車(EV)に代表される「新エネルギー車」の市場が急拡大し、2021年の販売台数は352万台に達した。中国政府は新エネルギー車の普及と関連産業の育成を強く後押ししており、2025年には国内の新車販売に占める比率を20%に高めることを目指している。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

そんななか、新たな商機として注目を集めているのが充電装置だ。新エネルギー車にとって、充電装置はエンジン車のガソリンスタンドの給油機に相当する必要不可欠なインフラであり、車両普及のペースに合わせて設置を増やさなければならない。

中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会(発改委)は2022年1月、第14次5カ年計画(2021~2025年)の期間中に充電インフラの建設を加速し、2000万台以上の新エネルギー車の充電需要に対応する目標を打ち出した。これを受けて、中国各地の地方政府が充電インフラの建設計画の前倒しを表明、多数の企業が参入に名乗りを上げている。

顧客の大部分は「営業車両」

とはいえ、充電インフラのビジネスははたから見るほど旨みのある商売ではない。新エネルギー車の充電装置は、個人用と公共用の2種類に大別される。そのうち個人用の充電装置は、新エネルギー車のメーカーがクルマを購入した顧客に贈呈するのが(中国では)一般的だ。装置の据え付け工事は、クルマの購入者が(自宅の)マンションの管理会社などに自分で連絡して手配する。

一方、公共用の充電装置は「充電スタンド」の運営会社が主体になって設置する。だが、その顧客はタクシーなどの「営業車両」が大部分を占めている。というのも、個人所有の新エネルギー車の充電には、前述した個人用の充電装置が主に使われるからだ。

しかも、営業車両は都市ごとに台数の上限が定められている。このため、公共充電スタンドは現状でも需要不足で設備の稼働率が低迷しており、運営会社は容易に利益を上げられないのが実態だ。

本記事は「財新」の提供記事です

「充電スタンドは新規参入のハードルが低い反面、利益の源泉が(運営会社が電力会社に支払う)電気代に上乗せする充電サービス料しかない。政府の補助金などがなければ、短期間での投資回収は難しい」。新エネルギー車業界の内情に詳しい専門家は、そう率直に指摘する。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は3月15日

財新 Biz&Tech

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