災害時「交通手段の断絶」に高速バスが強い理由 福島県沖地震で「新幹線の不通」を補えた背景

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報道によれば、3月いっぱいは東北新幹線沿線の各地から東京方面へ向かう高速バスはほぼ満席で、予約を取れない人も少なくないという。

ここで重要なのが、「リダンダンシー(冗長性)」だ。

移動に限らず、不慮の事故が起きた場合に備えて、業務の遂行のための別の解決法やルートを予め用意しておく考え方をリダンダンシーと呼ぶ。一見、無駄に見えるようでも災害時などにその威力が発揮され、あらためてその必要性を認識することが、近年しばしばある。

東北道と常磐道は、かつての国鉄の東北線と常磐線がそうであったように(夜行寝台列車全盛時は、上野から青森方面へ向かうブルートレインの一部は常磐線経由であった)、どちらかが通行止めになっても、東京と仙台以北を結ぶルートを確保するという点では、ともに重要である。

夜行寝台列車の全盛期を支えたブルートレイン(写真:エイジ0750 / PIXTA、2010年撮影)

同様に、交通機関もたとえシェアに圧倒的な差があっても、普段から別の移動手段が用意されていること、あるいはすぐに用意できるようになっていることは、リダンダンシーの観点からも有効であることが、今回の地震でも明らかになった。

もし、平常時に高速バスの路線がまったくなければ、翌日に急遽、走らせることは不可能だっただろう。本数は少なかったとしても、平常時から路線があったからこそ迅速に運行再開できたのである。

企業任せにしない方策の検討を

近年、高速道路の整備が進んで、並行する在来線で列車の削減が進行している。閑散路線では、存廃まで取りざたされることもあるほどだ。しかし、災害の多い我が国では、代替する交通路や移動手段を確保しておくことは、災害からの復旧や被災地の暮らしを守るためにも極めて重要である。

これは鉄道会社だけに任せて済むことではなく、地域全体で考えるべき課題の1つではないか。新幹線が止まっていても、震災から数日で各地への交通手段が用意できている現状を見て、現場の努力に敬意を表するとともに、企業任せにしない「人々(と物資)の移動の確保」の方策の検討の重要性を痛感している。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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