災害時「交通手段の断絶」に高速バスが強い理由 福島県沖地震で「新幹線の不通」を補えた背景

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もちろん、鉄道と道路では条件が異なるし、特に今回の地震のように高架のうえで脱線するような事態が起きると、復旧までにかなり長い時間がかかるのは容易に想像できる。

しかし、「人々の移動手段を確保する」という意味では、高速道路の迅速な復旧や通行止めの解除は、その使命を果たしているということができよう。

航空便+臨時快速+高速バスで完全補完

今回、東北新幹線の那須塩原~盛岡間(22日には郡山~一ノ関間に短縮)が不通になったことで、仙台や盛岡など東北の主要都市、とくに新幹線沿線の街では、首都圏との交通手段が事実上、奪われた。というのも、仙台や盛岡では、東京方面との往来の9割以上を新幹線が担っており、羽田と仙台や花巻を結ぶ空路はすでになかったからだ。

3月の後半は、卒業や入学・入社、転勤など、1年の中でも人の移動の多い時期である。それに、大学生の就職活動も解禁されたばかりで、人生をかけて企業訪問を行う学生の移動も重なる。

さらに、2カ月以上続いた首都圏など18都道府県のまん延防止等重点措置が3月22日から解除となり、観光客の戻りも期待されていた時期だ。タイミングとしては、非常に悪かったといえる。

しかし、新幹線を補完する動きは早く、翌日には普段運航していない仙台や花巻から羽田に向かう航空便が設定。JRの新幹線の不通区間に並行する在来線に、臨時の快速列車を走らせた。

特急「いなほ」などの車両が臨時快速として活躍した(写真:c6210 / PIXTA)

福島・宮城・岩手県などと東京を鉄路で結ぶ努力をしたJRの対応は、特筆に値する。

そして、ここでも大きな威力を発揮したのは、高速バスの運行である。もともと東北と首都圏を結ぶ高速バス路線があったため、高速道路の復旧により所要時間も従来と変わらずに運行できていた。

さらに臨時便の増発、定期便の複数台運行(満席時、同時刻に2号車、3号車を追加出発させる運行形態)、コロナ禍で運休していた便の再開などを行い、仙台駅でも福島駅でもバス乗り場には長蛇の列が続いた。

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