プーチンは中国の頼みごとに無条件で応じており、中露の親密な軍事同盟、経済同盟はすでにできあがっている。注目すべきは、プーチンの価値観が中国共産党のそれと似ており、欧米の価値観とは決して相いれない点だ。むしろアメリカへの憎しみが、中露を地政学的な同盟国にしている。アメリカと対立するうえで中国の支援は必要なので、プーチンは中国に頭が上がらないのである。
こういった振る舞いが、安定的な発展を理想とする保守主義と関係あるはずがない。それどころかプーチン氏の内外政策は、共産圏独裁者の振る舞いそのものなのだ。
プーチン体制と中国共産党は完全な互恵関係
本書でも克明に解説されているが、実際にプーチンはロシアの主権を次第に中国へ譲っており、中国によるロシア属国化を積極的に進めているようだ。中国のロシアに対する影響力が強くなればなるほど、プーチン体制の立場は盤石になるからである。
もちろん“ロシアの中国化”を積極的に推進するプーチンは、中国にとっても非常に都合のよいロシアの指導者だということになる。つまりプーチン体制と中国共産党は、完全な互恵関係にあるのだ。結果、将来的にロシア民族とロシア国家の存亡が危うくなったとしてもプーチンにとっては大きな問題にはならない。したがって、プーチンはナショナリストではないということになるのである。
そもそも国際金融資本は、1つのまとまった意思のある主体ではなく、多くの資本家の寄せ集めだ。そして資本家にはそれぞれの利益があるのだから、すべての資本家に統一された意思などあるはずもない。そういう意味で、「プーチンは国家金融資本と戦っている勇者だ」という表現はおかしいのだと著者はいう。
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