あのHuluが若手クリエーター発掘に力を注ぐ背景 オリジナルコンテンツを拡充させたい目論みも

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 ファイナリストに選ばれた5人のクリエーターたちは、キャリアもバックグラウンドもバラバラだ。『脱走球児』の近藤啓介監督は自主制作の映画や、深夜ドラマなどを手がける映画監督。『まんたろうのラジオ体操』の老山綾乃監督は、「真相報道バンキシャ!」などの情報番組を手がけるAD。『瑠璃とカラス』の吉川肇監督はバラエティー番組を手がけるテレビ東京のディレクター。『速水早苗は一足遅い』の上田迅監督はドラマ「シジュウカラ」や「極道めし」などを手がける演出家。そして『鶴美さんのメリバ講座』の幡豆彌呂史監督は大学生だが、これまで映像制作には一切関わったことがない未経験者だというのも異色だ。

本編と同時に、制作の裏側に密着したドキュメンタリーも配信されている。写真(右)は幡豆監督 ©2021 HJ Holdings,Inc

Huluで配信されている密着ドキュメンタリーでは、約半年にわたる作品作りの裏側に密着。若者たちがいかにして、映像作品を形にしていくのか、という制作過程のみならず、それぞれが抱える悩み、それぞれの背景なども映し出されており、それぞれのクリエーターの成長物語としても興味深い。

Huluでは、企画立案の時からこのドキュメンタリー作りを視野に入れていたという。「クリエーターがどういう思いで映像作品を撮っているのか。何を届けたいのか、ということはしっかりと見せたいと思っていました。そうした作る過程を観た若い人たちが、自分もやってみたい。応募してみたいと思ってもらえるような仕掛けを作りたかった」(中村プロデューサー)。

クリエーターの将来をサポートする

今回のプロジェクトのグランプリ受賞者には賞金と、豪華キャストの参加、通常の配信オリジナル作品と同程度の制作費を担保する「Huluオリジナル新作の監督権」が授与される。クリエーターを対象とした賞はこれまでも数多くあるが、資金的な問題などもあり、クリエーターの次回作や、将来的な道筋をサポートするような賞は数えるほどしかない。

若手のクリエーターには賞金も必要だが、次回作を作る場所や経験、そしてプロになるための道筋を示すことも必要だ。「完成した作品を観て、若手のクリエーターはもちろんのこと、若手の俳優さんも印象に残る人が多かった。そういう意味で、作品を観た映画やテレビの関係者、制作会社の方たちが、今度はこの人にお願いしてみようと。そういう流れになればいいなと思っています」(於保社長)。さらなる活躍につながる本プロジェクトは、動画配信サービスとしても注目される取り組みといえるだろう。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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