日産が5社が模索「移動会議室」にニーズはあるか 日本独自のミニバン観から本格実用化を目指す

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<ソフトバンク>
今後の(本格的な)商業化については、さらなる通信環境の提供に加えて(グループ傘下の)、PayPayや Lineなどと組み合わせたソリューションも考えられる。

<ゼンリン>
DNPと連携した地図機能を提供しているが、今後は地図データを活かして、近隣の飲食店の情報に基づいて注文を取ることや、目的地までの所要時間を航空機のようにカーナビ連携するなどの可能性が考えられる。

<日産>
移動のサービスの根幹となる将来の車両開発に活かしていきたい。車内空間を、ユースケースに応じて、いかに使うかを検証していく。(各種の)特装車でユースケース、自動運転など実証実験を踏まえて総括的に考えていきたい。

筆者のも実際に体験してその有用性や将来性を実感した(日産関係者撮影)

車内空間の新たなる価値創造として

車内空間に関するニーズの掘り起こしとして、日産は移動会議室のほかに商用バン「キャラバン」を活用した「マイルーム コンセプト」を東京オートサロン2022やジャパンキャンピングカーショー2022で一般公開している。

リモートワークへの解釈を広げて、移動する仕事場に加えて、「オシャレな家の離れ」がそのまま移動できるようなイメージだ。

キャラバン「マイルーム コンセプト」のエクステリア(筆者撮影)
フローリング仕上げの車内には、机や椅子に加え壁面収納も設置されていた(筆者撮影)

「マイルーム コンセプト」を担当する日産関係者は、筆者に対して「市場の声をしっかり聞いたうえで、量産化を検討したい」と答えている。このほか、サービス事業としては、日産は福島県浪江町で「モビリティ×エネルギー×まちづくり」の観点で、キャラバン等を使った貨客混載を含むオンデマンドタクシーを運行している

こうした社会の現状からバックキャスト(逆算)するさまざまな需要の創造が、総括的な事業として成立することが望まれるところだ。最後に、日産のデザインや商品戦略を統括していた元幹部から聞いた「日本人のミニバン感」に関する話を紹介したい。

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グローバルでミニバンのニーズや実用実績を精査する中で改めてわかったのは「日本人は、家の中の空間をそのまま屋外に持っていこうとする感覚がとても強い」という点であり、これは他の国や地域ではあまりみられない現象だという。

こうした国民性によって、他に類のない“ミニバン乗用化社会”が日本で定着していると日産は分析している。

この論理に基づけば、今回紹介した移動会議室やキャラバン「マイルーム コンセプト」などが普及する可能性も、十分に考えられるのではないか。車内空間の利活用について、これからの各方面での取材を続けていきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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