日産が5社が模索「移動会議室」にニーズはあるか 日本独自のミニバン観から本格実用化を目指す

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「エルグランドVIP 2列シート」をベースに作られた移動会議室の実験車両(写真:日産自動車)

日産グローバル本社1階の車寄せに、黒塗りハイヤーのミニバン「エルグランド」が停車すると、地元横浜でハイヤー事業を手がけるクワハラのドライバーが丁重に出迎えてくれた。

スライドドアが開き、ドアステップに最初の一歩を踏み出すと、目の前には通常モデルの3列シートではなく、高級なシートが2つ配置されている。着座すると、目の前には32インチモニターがあり、シートまわりにはUSB充電ポートやドリンクホルダーなどがある。

また、シートの近くのタッチパネルには、ドライバーに対しての「到着時間は何時ですか」「ゆっくり運転してください」「暑いです」「寒いです」「延長します」「降車/利用終了します」といったメッセージ送信表示があるほか、ドライバーとの音声通話も可能だ。

本来2列目シートがある位置に32インチ画面が設置される後席空間(写真:日産自動車)

このような車内の雰囲気は、まるで航空機のファーストクラスのようである。スライドドアが閉まると、モニターではオンライン会議システムを使ったプレゼンテーションが始まった。タイトルは『移動会議室 実証実験』

会議の参加者は、日産自動車、DNP(大日本印刷)、ゼンリン、ソフトバンク、クワハラの5社から1人ずつ、そして車内にいる筆者の計6人だ。

筆者が実際に見た、32インチ画面での会議資料(筆者撮影)

コロナ禍となり、オンライン会議は多くの人にとって日常生活の一部になっており、車内でドライバー以外の乗員がオンライン会議をすることもある。ただし、こうしたミニバンハイヤーを移動会議室に仕立て、しかも自動車メーカーが主導して行う事例はまだ珍しい。

走行前に筆者が懸念していたのは、市街地では交差点でのストップ&ゴーが多いため、車酔いしないかという点だった。実際には、担当ドライバーの丁寧なブレーキ操作の効果もあって気分が悪くなることはなく、全体的な雰囲気としてはまさに飛行機でファーストクラスに乗っているような感覚だった。

2020年に「移動会議室」が企画された背景

ここで、今回の移動会議室内で示された資料内容を紹介したい。企画の背景は、「価値観が多様化される現代社会において、移動空間をより満足できるものにすること」だ。

活用方法としては、エグゼクティブの通勤や会議、または仕事帰りの懇親などに加え、個人向け需要として観光、不動産の物件紹介、婚礼イベントなど、いわゆるリムジンサービスの部類が考えられている。

企画されたのは、2020年初頭の新型コロナ感染症が社会問題となり始めた時期だった。

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