日産が5社が模索「移動会議室」にニーズはあるか 日本独自のミニバン観から本格実用化を目指す

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その後、大方の予想を遥かに超える長期のコロナ禍になっていくが、その中でオンライン会議システムによるリモートワークが普及したり、ライフスタイルに対する考え方が多様化したりしたことで、移動会議室の付加価値が高まったともいえるだろう。

そのうえで、日産ら5社が移動中の会議に対する課題として、次の5点を抽出した。

・スマートフォンでは画面が小さく、情報取得の効果が悪い
・室内会議に比べて快適性が劣る
・ドライバーとの間仕切りがなく、会議内容や声量に気を遣う
・安定した通信環境が必要である
・既存のタクシーでは、会議終了より先に到着することがある

これら5つの課題の解消を目指したのが、今回の実証実験車なのである。

実は、こうした実証実験は今回で2回目だ。1回目は2021年6月28日から9月24日までの3カ月間、東京都内23区の一部地区内と横浜市、川崎市、横須賀市を出発地/到着地として行われた。

利用総数は112回。利用満足度は95%で、個別ポイントの満足度と必要度については、大型モニターやプライベート空間に対する評価が高かった。

日産グローバル本社前に到着した、日産エルグランドの特別仕様車とクワハラのドライバー(筆者撮影)

また、「使ってみたい」と答えたのは77%で、「会議利用としてハイヤー料金に追加料金を支払ってもよい」と回答したのは、回答数97人中の56人だったという。30分あたりの適正な料金としては、「1000~2000円」という答えが多かった。

こうした第1弾の実績を踏まえて、2022年2月17日から同年9月30日まで行われている第2回実証実験だ。

今回は、実用化を視野に料金を設定したうえで、期間中は無休の24時間営業で行われる。料金は1回あたり2万円から。乗車時間2時間、または移動距離30kmを越えた場合は追加料金が発生する。予約はクワハラの配車予約センターで受付ける形だ。

日産ら5社はどう考えている?

今回、取材した移動会議室の中で、各社担当者から本実証に関するコメントをもらった。以下、5社を順に紹介する。

<クワハラ>
ハイヤー需要は、コロナ禍で減少している。だが(潜在的な需要としてすでに)契約している法人など、役職者が移動中により良い環境のなかで会議をしたいというニーズはあり事業としての見込みはある。

<DNP(大日本印刷)>
車内コミュニケーションツールを提供している。(自社の事業全体としては)モビリティとかけ合わせたサービス作りを進めており、例えばMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)として、交通結節点でのDX(デジタルトランスフォーメーション)で賑わいをつくるモビリティポートという取組みをしている。

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