ウクライナが「ロシアから離れたい」経済的理由 EUに加盟した国、加盟しなかった国の差

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FDIも経済のアップグレードにおいて大きな役割を果たしている。1990年にはごくわずかだった対内直接投資残高が、2020年には対GDP比32%まで増加した。投資元の上位国はアメリカで全体の20%を占め、次いでドイツ、イギリスが続く。ロシアは上位10位にも入っていない。

重要なのは、この投資の半分がソフトウェア、再生可能エネルギー、ロジスティクスの分野で行われていることである。EUへの完全加盟は、FDIおよび貿易額の両方をさらに増加させ、その結果、近代化を加速させるだろう。

ウクライナ人にとって、繁栄、民主主義、独立、そして今日のヨーロッパにおける共同体の一員となることは、別々の目標ではなく、1つのタペストリーの中の不可分の糸なのである。

プーチン大統領がウクライナを脅威と見なす理由

この姿勢は、ヤヌコビッチ氏が大統領選を強行した2004年に顕著に表れた。人々は街頭に出て平和的な抗議を行い、その運動は「オレンジ革命」と呼ばれるようになった。彼らは再選挙を認めさせ、同選挙でヤヌコビッチ氏は敗北した(6年後には勝利したが)。

プーチン大統領は、「オレンジ革命」は純粋な民衆の感情から起こったのではなく、西側情報機関の策略が裏にあるのだと自らを納得させた。その1年前にグルジアで起きた親モスクワ派の支配者に対する「バラ革命」についても、同じような妄想を抱いていた。

この自己欺瞞があったからこそ、プーチン大統領は、今年実行したウクライナ征服の試みにウクライナ人が強く抵抗することを予測するのに完全に失敗したのである。

プーチン大統領がウクライナを脅威と見なすのも無理はない。もしウクライナ国民が豊かな自由主義国家を築くことができれば、ロシア国民もまた「われわれにできないはずがあろうか」と問い始めるかもしれないからだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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