EUに加盟した東欧6カ国と、未加盟国であるロシア、及びその他3カ国(ウクライナを含む)の成長を比べてみよう。
1990年当時、各グループの1人当たりGDPの平均は、ユーロ通貨圏の1人当たりGDPの44%だった。2019年には、EUに加盟したグループでは、1人当たりGDPはユーロ圏の水準に対し70%まで上昇したが、ロシアほか3カ国ではなんとユーロ圏の39%にまで落ち込み、後れをとっている。
さらに、EU加盟6カ国のうち1990年に最も貧しかった国が、最も大きく追い上げている。比較的貧しかったポーランドとリトアニアは、より豊かなチェコ共和国よりも速く成長した。チェコは依然として最も豊かな国であるが、他との差は縮んでいる。
対照的に、ロシアは2013年以降、回復が停滞した。偶然であるかはともかく、それはプーチン大統領が経済復興重視から帝国としてのロシア/ソビエト再興を目指す路線へシフトした際と時期が重なる。
元共産主義国だった15カ国のうち、2013〜2019年間の1人当たり所得の伸びは、他の国々の平均が年間3%だったのに対し、ロシアはわずか0.5%と3番目に低い伸びを記録した。これよりひどかったのは、ベラルーシと、その侵略の犠牲となった国だけであった。ウクライナである。
EU完全加盟が経済的な違いを生むワケ
なぜ、EU諸国との統合、ひいてはEUへの完全加盟が、ウクライナにとってこれほど大きな違いを生むのだろうか。
1つには、EUは移行措置として非加盟国との連合協定を結んでいるものの、完全加盟には「コペンハーゲン基準」と呼ばれる一定の基準を満たすことが必要である。コペンハーゲン基準は、単に法の支配、一定の民主主義的規範、腐敗防止策だけでなく、成長を促す市場志向の経済改革や、最終的にユーロ通貨を採用することを推進するものだ。各国は通常、数年かけて準備を整える。
プーチン大統領の前任ボリス・エリツィン氏はロシアのEU加盟について発言したことがあるが、プーチン大統領はというと、EUのロシア問題に対する干渉を伴うとし、けっしてそれを望んだことはない。その代わりとして、旧ソ連にかつて吸収された国々や、ロシアの衛星国のみからなるユーラシア経済連合を組織した。
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