81歳の志茂田景樹「短所はほっとけ」と語るワケ 短所は直しづらいが、長所は磨けば光ってくる

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小学校に上がると、3月25日生まれの僕には、4月、5月生まれの同級生がいくつも年上に見えた。運動能力は格段に劣っていたな。50メートル競走なんか、走るほどに差がついて、みんなゴールインしたというのに、まだ10メートル以上走らなければゴールインできなかったのよ。運動会じゃ観客席の前を走ると、笑いと拍手が起こったよ。僕はダメだダメだと打ちのめされた。

小学1年時の担任の一言

学科だってほぼ1年先に生まれた連中に敵いっこねえよな。また、ダメだダメだ、と自分を卑下したもんだ。でも、当時、40歳前後と思える女性の担任の先生は、「あなたは漢字をよく知っているし、漢字の覚えも速い。作文もうまいよ」と、褒めてくれた。

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僕の才能はそっちのほうかなあ、と何となく自分でも思うようになった。母が絵本の読み聞かせをしてくれたおかげだ、とわかったのはもっともっと先のことだったけどな。

先生の言葉が意識の端にずっと残ったんだろうね。読むことが好きになり、小学校の高学年では大人が読む本も読むようになった。

それが明確な作家志望に結びつくのは、いろいろ曲がりくねって人生の道草を食ったあとだけど、小学1年時の先生の一言が起点になったと思う。自分じゃ意識できなかった長所を彼女のおかげで意識できたのだから。

僕は今でもドサンと短所があるけれど、ものを書いて煙に巻いて多数の短所をくらませているんだぜ、きっと。長所は自分でもいずれ気づくし、人が見つけてくれることも多いぞ。

いいか、長所が認識できたら短所に構うな。長所を磨きに磨いて磨き抜け。

志茂田景樹 作家

1940年、静岡県生まれ。中央大学法学部卒業後、さまざまな職を経て作家を志す。1976年、『やっとこ探偵』で小説現代新人賞を受賞。40歳のとき『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。ミステリー、歴史、エッセイなど多彩な作品を発表していく。活字離れに危機感を持ち、「よい子に読み聞かせ隊」を結成、自ら隊長となり幼稚園や保育園をはじめ、さまざまな箇所を訪問。絵本『キリンがくる日』(木島誠悟・絵、ポプラ社)で第19回日本絵本賞読者賞【山田養蜂場賞】受賞。2010年4月から「@kagekineko」のアカウントでtwitterを開始。読む者の心に響く名言や、質問者に的確なアドバイスを送る人生相談が話題を呼び、フォロワー数は41万人を突破している。

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