81歳の志茂田景樹「短所はほっとけ」と語るワケ 短所は直しづらいが、長所は磨けば光ってくる
小学校に上がると、3月25日生まれの僕には、4月、5月生まれの同級生がいくつも年上に見えた。運動能力は格段に劣っていたな。50メートル競走なんか、走るほどに差がついて、みんなゴールインしたというのに、まだ10メートル以上走らなければゴールインできなかったのよ。運動会じゃ観客席の前を走ると、笑いと拍手が起こったよ。僕はダメだダメだと打ちのめされた。
小学1年時の担任の一言
学科だってほぼ1年先に生まれた連中に敵いっこねえよな。また、ダメだダメだ、と自分を卑下したもんだ。でも、当時、40歳前後と思える女性の担任の先生は、「あなたは漢字をよく知っているし、漢字の覚えも速い。作文もうまいよ」と、褒めてくれた。
僕の才能はそっちのほうかなあ、と何となく自分でも思うようになった。母が絵本の読み聞かせをしてくれたおかげだ、とわかったのはもっともっと先のことだったけどな。
先生の言葉が意識の端にずっと残ったんだろうね。読むことが好きになり、小学校の高学年では大人が読む本も読むようになった。
それが明確な作家志望に結びつくのは、いろいろ曲がりくねって人生の道草を食ったあとだけど、小学1年時の先生の一言が起点になったと思う。自分じゃ意識できなかった長所を彼女のおかげで意識できたのだから。
僕は今でもドサンと短所があるけれど、ものを書いて煙に巻いて多数の短所をくらませているんだぜ、きっと。長所は自分でもいずれ気づくし、人が見つけてくれることも多いぞ。
いいか、長所が認識できたら短所に構うな。長所を磨きに磨いて磨き抜け。
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