81歳の志茂田景樹「人生の9割は無駄」と語る理由 30代半ばまではほとんど後ろ向きで生きてきた

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志茂田景樹さん(写真提供:志茂田景樹事務所)
「人生の9割が無駄である」と言われたら、どう思うでしょうか。大学を2年留年して卒業、それから何度も職場を変える転職人生を経た志茂田景樹さん。30代半ばまではほとんど後ろ向きで生きてきたと話します。81歳の今は、関節リウマチと呼吸器疾患を抱えて車椅子ユーザーの介護生活を送っています。
「人生の9割は無駄である」は、そんな志茂田景樹さんの言葉です。
「無駄をやっているんじゃないか、無為に年月を浪費しているんじゃないか。それならばそれでいい。人生の9割は無駄なのだ、と割り切ればいいだろう。あとの1割の中で結果が出る、と開き直れ。無駄だと思っていることはけして無駄じゃない。人生の醍醐味はそこにあるということをしっかり胸に刻み込んでほしい」
転職人生の末、40歳で直木賞を受賞した志茂田景樹さんの8年ぶりのエッセイ『9割は無駄。』から、抜粋してメッセージを紹介します。

これが幸せか、って感じながら1日がスタートする

「幸せって厄介だ。
ガンガン仕事をして毎夜好きに遊びまくっても
幸せなんて感じなかった。虚しさは感じてもね。
今はベッドから車椅子に移った瞬間、
ふっと安心する。
これが幸せか、って感じながら車椅子生活がスタートする。
厄介だな、こんなときに感じさせて、
と愚痴ろうと思っても、いないんだ、もう」

幸せって厄介なもんよ。

僕が超多忙だったのは、1990年代前半の数年かな。原稿執筆に、テレビ、ラジオ出演に、講演、イベントに追われ追われて、いつも時間が足りなかった。

この時代の僕の早業は、マイクロカセットテープレコーダーを片手に、書く代わりに口でしゃべることだった。調子が出たときは1時間で400字詰め原稿用紙40枚分ぐらいを吹き込んだものよ。当時の新幹線には個室があって、その個室を確保して吹き込むことがよくあった。

講演で大阪などに日帰り出張のときは新幹線で往復することにして、個室が臨時の仕事場になった。

締め切りを過ぎているのに、長編小説をまだ3分の1ぐらいしか書けていないことがあって、残りを新幹線で往復移動中に吹き込んだこともあったのよ。

短めの長編になったが、東京駅のホームでテープを渡すと、その担当編集者が、「奇跡だ!」と、狂喜してくれたこともあった。

だいぶ慣れてくると、事務所の車でテレビ局や講演会場、イベント先へ移動するときにも、気楽に悠々と吹き込みできた。おかげで、執筆の能率が上がったものよ。

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