ロシア傭兵になるシリア人「金とそれ以外」の事情 中東から見た「ウクライナ侵攻」の実際

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しかし、この主張は実態と大きく懸け離れていると言わざるをえない。シリアの独立系ネットメディア「デリゾール24」が13日報じたところによると、志願兵登録所が開設され、ウクライナへの移送手続きが始まった。契約期間は6カ月で、延長もありうるとされ、ロシア側が渡航や医療、給与を負担する。ロシアが勝利すれば、最大5万ユーロ(約640万円)の報奨金が得られるという。

2011年に始まったシリア内戦の開始当初から動きを記録し続けている民間団体「シリア人権監視団」は、シリア軍情報部門が志願兵の募集に関与しているとし、月給は1500〜2500ドルと伝えている。

首都ダマスカス周辺では、アサド政権の与党バース党の事務所などが登録施設となり、大勢の若者が詰め掛けているという。志願兵は、シリア北西部ラタキア南東にあるロシア軍のフメイミム空軍基地で簡単な訓練を受け、前線に派遣される。

汎アラブ紙アッシャルクアウサトによると、7000ドルの支給が約束されるが、派遣期間は7カ月間で、契約の第一条件がその期間は帰国しないことという。募集では、施設の警備などが任務とされ、ロシア軍は、ウクライナの首都キエフなどを制圧した後の占領統治も視野に入れ、ゲリラ戦や狙撃などの危険がある警備任務を外国人の傭兵に任せたい考えがあるようだ。

同紙は、募集期間が最低7カ月ということは、ロシア側が数カ月ないしは数年にわたって戦争が長期化すると予想している証しだと指摘している。

金銭目的以外のシリアの内情

このように命の危険が明確にある任務にかかわらず、シリアの若者が名乗り出ているのは第一に経済的な事情がある。シリアでは、内戦や制裁による国際社会での孤立、ロシアへの経済的なつながりなどから危機的な状態にある経済は、ウクライナ侵攻を受けて、通貨ポンドがさらに下落するなど一段と悪化している。志願兵としての金銭的な対価は、現地での平均的な月給の10倍前後に相当する。

さらに、ロシアが2015年にシリア内戦に介入したことで命脈を保ったアサド政権は、反体制派を恐怖支配で封じ込めており、今も政権支配地域での表立った抗議行動や反体制的な意思表示は命取りになる。ロシアに志願兵の規模で恭順の意を示したいアサド政権は、志願兵になれば反体制的な過去の「犯罪歴」を帳消しにしたり、家族の身の安全を保証したりするとして、数集めに躍起となっている。

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