根底に愛情のない「厳しさ」が組織を崩す

経沢香保子・カラーズ社長の仕事感(下)

経沢:私自身の意識は何も変わりませんでした。社員と社員の家族に喜んでいただけたことと、一流の会社にしたいという目標のうちのひとつが達成できたのは、単純にうれしかったです。日本の上場企業約4000社のうち、女性社長の会社は20社くらいしかなかったから、みんなに「こんなに普通っぽい女性でもできるんだな」と思ってもらい、上場を目指す女性が増えればいいなとは思いました。

同時に、上場したとしても、ここから10社に1社くらいしか生き残れないだろうと思いました。上場は「デビュー」。ここからは上場企業4000社の中で、どれだけ社会に強く愛されるかという闘いです。永遠に続く闘いだから、ただのスタートだと思っていました。

信頼は自分の信念を貫くことから生まれる

太田:経営戦略って、中期は見えても10年後とか長期はなかなか見えづらい。どう変わるかなんてわかりません。

経沢:そうですよね。だからビジョンが語れないといけないと思っていました。本当のところ、みんなが知りたいのは3年後、5年後にも株が上がるかです。でも、実際は、不確定要素が大きい。なので焦点は「この会社はやりきるか?」「ビジョンに共感できるか?」「そのビジョンを応援したいか?」ということになってくると思います。アマゾンだって今は赤字ですが、ビジョンに共感している人はたくさんいるのではないでしょうか。

太田:では、上場して変わらなかったことは何ですか?

経沢:自分のやりたいことは変わらなかったです。女性を解放したいなど、「女性」というテーマがどんなシーンでも変わらなかったのは、私にとってよかったことです。また、本当に応援してくれる人は上場前も上場後も、同じように応援してくださいました。

トレンダーズを辞めたときも、上場企業の社長ではなくなるということで、人が離れていくのも覚悟しました。多くの人は私の周りから去って行くのかなと。でも、変わらない人は変わらなかった。むしろ社会的に評価されている人ほどずっとそばにいてくださいました。逆に「これからもっと頑張れ!」とか「これからの経沢さんが楽しみ!」などと声をかけてくださって。

太田:逆に女性起業家として目立つと、足を引っ張る人もいますね。

経沢:そうかもしれませんね。私も嫌な目にもあったりしましたが、作り話はしょせん作り話にすぎず、わかる人にはわかってもらえると実感しています。そして、嫌がらせをされても、それで足を止めないことが大切だと思っています。ヤジがあっても、結果を出せば後からそれが追い風になる。この人は何があっても行きたい方向に向かう、信念を貫くと思ってもらえるよう努力するのが、周りの信頼を作ることだと思います。

太田:ITを使った女性支援、育児支援事業を展開していく、カラーズの今後について教えてください。

経沢:カラーズという社名は、一人ひとりの個性を発揮して、それが手をつないで相乗効果を発揮している社会のイメージです。今回の挑戦は「女性×テクノロジー」です。

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