円安の進行に「まったく違和感がない」3つの理由 「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」へ

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成長率の違いは2つめに説明する金利にも関係してくる。旺盛な需要を復元できた欧米経済では物価や市中金利は上昇した。だからこそ金融政策の正常化に関する議論が盛り上がり、2022年はその実行へと歩を進めようとしている。

一方、日本はいまだに首都圏を中心にまん延防止措置を敷き、飲食店などは時短営業を強いられている。日々の新規感染者数の水準を社会的関心事として、依然、大きなヘッドラインと共に報じている。

こうした世相が変わる雰囲気はなく、今後も政府・与党から出てくる防疫政策は大きく変わらないだろう。コロナに対する向き合い方の違いが成長率格差や金融政策格差ひいては通貨の強弱につながってきたことは疑いようがない。

もともと日本の成長率は低いが、「2020年の低成長に対する2021年の反動」は地力には関係なく訪れるはずである。それがなかったのは、日本固有の他の要因が作用したと考えざるをえない。

日本だけが「ゼロ金利」

金利に関しては、目下勢いづく円安相場に日本銀行が危機感を持ち、正常化を検討するならば多少、変わりうる。

しかし、2021年来、黒田日銀総裁は再三にわたって「悪い円安」「円安の弊害」を指摘する声に反意を示し2022年に入ってからも「大規模緩和は(経済に)プラスなので、粘り強く続けて目標を達成することが一番重要」と主張している。

ウクライナ侵攻で資源価格の高騰した現状でもこの見解は変わらないのだろうか。いずれにせよ、日銀が正常化プロセスを検討しないかぎり、内外の金融政策格差は顕著に拡大する。

現時点で、先進国中銀の中で利上げをしたのはイングランド銀行だけで、政策金利の「格差」が開くのはこれからの話だ。「日本だけゼロ金利」という環境の下で、2005年~2007年に円キャリー取引(円で調達して外貨で運用)が活発化した。今から起きようとしていることはそれに近いのではないか。

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