円安の進行に「まったく違和感がない」3つの理由 「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」へ

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第一次所得収支黒字に依存してきた日本の経常黒字は、円相場を支えるという観点に立てばかなり前から「張り子の虎」だった。また、経常収支と対をなす金融収支(直接投資や証券投資など)においては過去10年で対外直接投資が猛烈な勢いで増えてきた。

結果、日本の基礎収支(経常収支+直接投資)は断続的に外貨への流出につながる構造になっている(下グラフ)。円安が肯定されやすい地合いだ。このような需給の変調が見え始めたのはこの10年で、最近のことではない。

ただ、短期的な変化に反応しやすい為替市場では「経常赤字に転落」という事実がクローズアップされやすく、過去2番目の経常赤字が発表された2022年3月8日の後、ドルが対円で高値を更新したことは偶然ではないだろう。

「落日の円」には厳しい評価が下る

経常赤字が続けば、対外純資産の累増も止まりかねない。円安になれば価格効果で残高が増える効果もあるが、残高の伸びが鈍化すれば、毎年巨額の貿易黒字で日本を猛追するドイツが世界最大の対外純資産国のステータスを奪うかもしれない(下グラフ)。

世界最大と世界第2位で本質的な差があるとは思わないが、30年間維持してきたステータスを失うことについて、為替市場が冷静な対応をしてくれるだろうか。「落日の円」に対する評価は厳しいものになると筆者は考える。

目先の為替見通しだけを考えれば、場合によってはFRB(連邦準備制度理事会)が実体経済への影響に配慮して正常化プロセスを停止し、それがドル安を招くという可能性もある。

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