《プロに聞く!人事労務Q&A》うつ病で休職中の社員がリハビリ勤務をする場合、どのような点に気をつければいいですか?
■リハビリ勤務中の処遇
○労務提供を求めない場合
休職期間中は労務の提供が免除されているため賃金の支払い義務はありません。
一般的には、健康保険による傷病手当金を受給しています。
賃金の支払いがないリハビリ勤務は、会社はどんな簡単な業務でも指揮命令ができません。社員の自主性に任せることになります。
○労務提供を求める場合
会社の指揮命令に基づく労務提供を求めるのであれば、賃金は支給しなければなりません。
○労災保険の適用
賃金の支払いがないリハビリ勤務は就労ではないため、労災保険の適用を受けられません。そのため、勤務中および通勤途上の事故では労災保険による給付は受けられません。
■リハビリ勤務に伴う病状悪化
労務提供を求める以上は、病状が悪化しないように安全配慮義務を負います。病状の悪化を回避できるよう早期の気づきと迅速な対応が必要です。
厚生労働省は2004年10月、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援のために、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を発表しました。
この手引きは、病気休業開始・休業中のケアから職場復帰、職場復帰後のフォローアップまでを5つのステップに分けて対策を示しています。休職者の職場復帰に関して参考になります。
リハビリ勤務・職場復帰の最終的な判断決定は、会社にあります。
ケガなどによる治癒の判断と比べ、精神的疾患の場合は非常に判断が難しいです。判断するときに主治医の診断書だけではなく、社員との面談、産業医からの意見聴取、社員の了解を得て主治医と三者面談を行ってからリハビリ勤務・職場復帰の決定を行ってください。
特に主治医との三者面談では、具体的な業務内容等を説明して、業務を遂行できるか、また、リハビリ勤務・職場復帰後の配慮事項も確認してください。
(注)「リハビリ出勤」と「リハビリ勤務」は、人によって異なる意味で扱っています。今回は、「リハビリ勤務」に統一しています。
東京都社会保険労務士会所属。1985年に雇用システム研究所を設立。企業の労務管理、人事制度設計のコンサルティングを行う一方で、社員・パートの雇用管理に関する講演も行っている。東京地方労働審議会臨時委員、仕事と生活の調和推進会議委員。著書に『パート・高齢者・非正社員の処遇のしくみ』(共著)。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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