図で読みとく!「消費増税」に関する大誤解 日本の借金は世界最悪と言うけれど……

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サミュエルソンの例えにならうと、戦争をするために戦時国債を発行し、資金を調達しても、使えるのは「現時点の弾丸(原資)」で、「将来時点の弾丸(原資)を現在の敵に投げつけることはできない」のです。

国債償還(実際は金利償還)のために、将来時点で増税するということは、将来のGDPの中で「貯蓄S(C)を税Tに回す」かどうかの話であり、孫世代の中での所得の再配分の問題なのです。

この場合、国民所得は、税金→負債を持つ政府→国債利払い費→資産である国債保有者→国民所得と、回り回って国民所得に戻るだけです。

国債暴落を防ぐために、消費増税が必要?

財務省は、消費税率を、予定通り来年10月から10%に引き上げるように求めています。財務省の言い分は、「国の財政が破綻する状態を避けるため」です。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)をゼロにすれば、国債/GDP比が上がらず、信認されるというものです。政府は2020年までにプライマリー・バランスを黒字化するという目標を掲げました。

しかし、消費増税は、現実の経済にショックを与えます。今年4月の増税による駆け込み需要とその反動は、1997年の増税時をはるかに上回る大きなものでした(年度をトータルすると、プラスマイナスを相殺し、プラス成長にはなりそうです)。

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