「ドラえもん」が50年以上愛され続ける納得理由 藤子・F・不二雄と立川談志、その意外な共通点

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――なるほど。F先生は体調を悪くされたこともあって、1987年くらいから『ドラえもん』の短編連載を減らし、毎年1本の長編執筆に集中するようになりました。レギュラー短編の執筆は1991年で終了。逝去される5年前です。

佐藤:その意味で、『のび太の宇宙小戦争』は非常に脂が乗りきった時期に描かれた傑作だと思います。自分の話に引き寄せるなら、僕は『ドラえもん』のTVシリーズで原作ありの短編を、今回の映画で原作ありの長編を、自分なりに咀嚼して脚本にさせてもらいました。「最初からオリジナルしか描かない」とか「映画の脚本だけをやる」みたいな関わり方とは全然違うスタンスで、『ドラえもん』に寄り添えたんじゃないかなと。

落語の風刺としての「ポータブル国会」

――ところで、佐藤さんが一番好きなドラえもんの道具はなんですか?

佐藤:脚本家目線でぜひ書いてみたいと思っているのが、「ポータブル国会」(初出『小学六年生』1977年1月号)です。

――自分の好きな法案を紙に書いて入れると、日本全国でそれが施行されるという。

佐藤:無茶な法案を入れると「カイサン」という音を出して爆発する。あれ、最高ですよね(笑)。

――『ドラえもん』って、ときどきすごい社会批評とか風刺をぶっこんできますよね。

佐藤:当時の国会の動きとリンクしていると思うんですけど、むしろ今なら、もっといろいろとやりようがあるなと。風刺的な道具としては、「どくさいスイッチ」(初出『小学四年生』1977年6月号)というのもありましたが。

――邪魔者を好きに消すために使う、ファンの間ではかなり人気が高い道具です(笑)。

佐藤:でも、どくさいスイッチはSF(サイエンス・フィクション)の色が強いんですよ。その点ポータブル国会は、どちらかというと落語の色が強い。落語の風刺。こういうところが『ドラえもん』の普遍性だと思います。立川談志が言うところの「人間の業(ごう)の肯定」を描いている落語が、時を経ても古びないのと一緒なんですよね。

稲田 豊史 編集者・ライター

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いなだ とよし / Toyoshi Inada

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)などがある。

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