「ドラえもん」が50年以上愛され続ける納得理由 藤子・F・不二雄と立川談志、その意外な共通点

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佐藤:そうそう、クリエイティブ。だから、のび太って実はすごいアイデアマンだし、実は地頭がいい。彼の真骨頂ってそこだと思うんですよ。「体力もない、勉強もできない、自信もない自分が、ドラえもんのおかげでやっていけている」ではないんです。

のび太の真の実力は、道具を与えられたときに、用意された使い方だけじゃなくて、「こう使ったほうがいいんじゃない?」って提案できる、ハッキング能力の高さにある。それって、「お仕着せの生き方だけじゃない、こういう生き方もあるよ」と作品自体が提示してるとも受け取れるじゃないですか。

――オルタナティブな生き方の提示。すごく現代的ですね。

佐藤:しかもF先生がすごいのは、そういうのび太の長所を、のび太自身だけでなく受け手も気づかないような描き方をしているということです。実は僕も含めたTVシリーズの脚本陣がいちばん苦労しているのは、そこなんですよ。

それで言うと、ドラえもん好きの人がよくツッコミを入れるじゃないですか。「この状況でドラえもんたちは困ってるけど、あの道具を出せば一発解決だよね」とか。

「とんちを描くためにやっているんです」

――「そこでどこでもドアを出せば、すぐ地球に帰れるのに」みたいな(笑)。

脚本家。1969年、埼玉県生まれ。専門学校在学中から放送作家として活動をスタートし、1997年に放映された『永久家族』で初めてアニメ脚本を手がける。代表作に『カウボーイビバップ』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『怪盗ジョーカー』『サイダーのように言葉が湧き上がる』など(撮影:今井康一)

佐藤:短編の『ドラえもん』は道具を描くためではなくて、とんちを描くためにやっているんです。

『ポケットモンスター』の生みの親である田尻智さんも、似たようなことをおっしゃっていました。ゲームのシステムを考えるとき、ゲームの障壁を考えるんじゃなくて、攻略とセットで考えるんだって。F先生の発想もそうだと思うんです。のび太は与えられたものをそのまま使わないで、何かを増幅して使う。ジャイアンやスネ夫とは違う使い方、違う攻略をする。そこが面白いし、読んでいる子どもたちのわくわくを呼び起こす。

――『ドラえもん』が面白いのは、「道具が夢いっぱいだから」ではないと。

佐藤:それをあまり声高に言わないで、さらっとやってるのが実にかっこいい。粋(いき)なんですよ。

――まさしく落語ですね。実際、F先生も落語好きでした。

佐藤:だから、F先生の『T・P(タイムパトロール)ぼん』や青年向けに描かれた諸々のSF短編とは違うんです。これらはもっとちゃんとSF(サイエンス・フィクション)。つまりSFが主。一方の『ドラえもん』とか『チンプイ』とか『ウメ星デンカ』みたいな生活ギャグ作品は、ハッキングやとんちの部分が主だと思うんです。

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