知識を潔く捨ててこそ、ミステリーが解ける--『宇宙は何でできているのか』を書いた村山斉氏(東京大学数物連携宇宙研究機構長・特任教授)に聞く
──発見には偶然が大いに関係するようです。
宇宙のビッグバンの証拠は、宇宙のずっと遠くから来る電波によって見つかった。アメリカのベル研究所で通信を研究していて、どうも雑音が入る。その雑音を取り除こうと八方手を尽くしたが、ダメだった。宇宙全体から来るこの雑音こそビッグバンの証拠発見に道を開いた。
──といっても、偶然だけに頼るわけにはいきません。
時には、今まで持っていた知識を潔く捨てることが大事になる。今までの知識を乗り越えることで科学は進歩している。大きな飛躍は、よく勉強しているから、次のことがわかる、という世界にはない。むしろ、どうやって新しい発見をするかという世界だ。自然科学における大発見には、「ひょうたんから駒が出る」ものがいっぱいある。
──それが、ビジネスマンに読まれている意外な理由でしょうか。
日頃の忙しい生活から離れて、究極のことを考えてみるのもよいが、パッと発想を転換することで道が開けた事例がたくさんあるので、ビジネスで発想を転換するときに参考になるのかもしれない。
(聞き手:塚田紀史 撮影:ヒダキトモコ =週刊東洋経済2010年11月13日号)
むらやま・ひとし
米カリフォルニア大学バークレー校教授を兼務。1964年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門は素粒子物理学。2002年西宮湯川記念賞受賞。07年数物連携宇宙研究機構(IPMU)の初代機構長に就任。主な研究テーマは超対称性理論、ニュートリノ、初期宇宙、加速器実験の現象論など。
『宇宙は何でできているのか』 幻冬舎新書 840円 226ページ
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