子どもに「向精神薬」を飲ませた親の深い後悔 成長過程の脳への長期的な影響はわかってない

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石川医師は、「子どもの多動は、成長とともに落ち着くことがほとんどだ。しかし、最近では脳が発達途中の7~8歳以前に、薬を服用するケースが増えている」と話す。

こうした向精神薬を低年齢の時期から長期服用することによる身体への影響は、データの収集や調査すら行われていない。

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「すべての薬には副作用のリスクがある。症状が重く、薬を使うベネフィットがリスクより大きければ使う。だが、成長過程の脳に作用する薬を長期間飲むことの影響はわかっていない。どうしても必要なときに限って、明確な目的と期限を決めて使えば問題ないが、そうした使い方をする医師は少ない」(石川医師)

薬がやめられなくなり、吉田さんのように服用させたことに罪悪感を覚える親がいる。だが、服薬の可否を親に迫ること自体が残酷だ。それは親だけの責任ではない。親子が薬に頼らざるをえなくなった環境、そして薬を漫然と処方する医師にこそ責任がある。

国連は深刻な懸念を示す

当時、吉田さん自身も追い詰められていた。「迷惑をかけて、すみません」。娘が子どものころ、吉田さんは毎日のように周囲に頭を下げた。

「人に迷惑かけてはならない。薬で抑えられるなら、飲めばいいという思いはあった。うちの子が薬を飲めば大人しくて、先生たちの手を煩わせないのかなと。今思うと、そこまで頭を下げなくてもよかったのに、そのときはそうしないと、自分が保てなかった」

国連の子どもの権利委員会は2019年、子どものADHDの診断と向精神薬の処方が増加していることに深刻な懸念を示し、その根本的原因について研究を実施することを日本に要請している。

しかし、国連の勧告に反して、向精神薬の服用はより低年齢の幼児にまで広がっている。

(第3回はこちら「低年齢の発達障害、薬で隠される子どもの危機」

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井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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