学校から薬を勧められる「発達障害」の子どもたち 発達障害の児童はこの13年で10倍に増えている

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普通学級には「発達障害」の子どもは在籍しにくくなっている(写真:Yokohama Photo Base / PIXTA)
日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。
発達障害とされる児童数はなぜここまで増えているのか。そして、発達障害の早期発見、投薬は子どもたちを救っているのだろうか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第1回は「学校から薬を勧められる発達障害の子どもたち」
第2回
子どもに「向精神薬」を飲ませた親の深い後悔

第3回
低年齢の発達障害、薬で隠される子どもの危機

第4回
いじめを受けた発達障害の彼女が語る薬の闇

 

「小さいうちのほうが少量で済むから、薬を飲んだほうがいいですよ」「薬を飲んで落ち着いた子もいます」

都内の公立小学校に通う息子が小学3年生のときのこと。母親の後藤恵美さん(仮名)は、学校の面談で特別支援教室の教師から言われた言葉に戸惑った。

後藤さんの息子は、低学年の頃から授業中に教室の外に出てしまったり、同級生にちょっかいを出したりと落ち着きがなかった。これまで学校の面談では、何度も服薬を勧められた。

「学校の面談で言われている以上は何かしなきゃ」

そう思った後藤さんは、子どもの発達障害を診る近所のクリニックに息子を連れて行くと、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された。ADHDは、不注意と多動、衝動性が特徴とされる発達障害の1つだ。

学校が「薬の服用」を推奨

たしかに息子は、学校から見ると「問題行動」と言われる言動がある。同級生とトラブルがあると、学校から連絡があり、後藤さんが菓子折りを持って相手の親に謝りに行ったことは一度や二度ではない。それでも、後藤さんは今の段階で薬を飲ませたくないという。

「自分もイライラして、『薬さえあれば』と思うことがあります。でも、一度飲み始めると、いつまで続けるのかわからない。多動は成長して落ち着くこともあるので、今は薬に頼りたくありません。本人が薬を理解したら考えようと思っています」

そう話す後藤さんだが、教師や副校長に囲まれる面談が毎回憂鬱でたまらない。「医者よりも学校の先生から薬を勧められるのが、一番つらい」という。

後藤さんのように学校から促されたことをきっかけに、医療機関につながるケースは珍しくない。複数の医師によると、学校から薬の服用を推奨されて医療機関を訪れる患者がいるという。発達障害児を診療する獨協医科大学埼玉医療センター・こころの診療科の井原裕診療部長は、次のように話す。

「薬ですべてが解決すると思い、『薬を出してもらえ』と家族に命じて、患者を受診させる教師もいる。私は『魔法の薬』ではないと伝えている」

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