浮気とDVを繰り返す夫はわかりやすい悪者として描く一方で、許されぬ関係を結ぶ相手は救世主のような存在です。そこにも疑問を持つとある意味、楽しめません。おとぎ話の王子様的な設定で突き進んでいきます。さらに「実は2人の出会いは……」「実は春斗は……」と明かされていく背景もどれもこれも使い古されたベタすぎる展開。この想像の域を超えない無難さが心地よいとも言え、小難しさが増すドラマトレンドとあえて逆行していることに潔ささえ感じます。
人妻たちが惜しげもなく披露する濡れ場
このドラマの話題性はタワマンという人の欲望を象徴するような場所を舞台に、妻たちが惜しげもなく披露する濡れ場にもあります。このシーンのために話が進んでいくようで、あざとさは否めませんが、女性目線のエロチシズムを極めていることには評価できそうです。ゆり葉を演じた長谷川の演技は息を吞むほどです。
岩田演じる春斗の後ろ姿ヌードを映し出した場面に至っても、カメラの捉え方は行為そのものよりも肉体美をいかに魅せるかにこだわっています。もちろん個人差はありますが、女性が男性のどこを静観しているのかがわかるような切り取り方です。
一方、このドラマに登場する夫役の男性陣キャラクターの描き方は型どおりの悪者扱いです。エピソード毎のタイトルは篠原演じるさくらの「金魚妻」から始まり、グラビアアイドルの中村静香による「外注妻」のほか、「弁当妻」「伴走妻」「頭痛妻」「改装妻」といった具合に並び、つまり、妻目線の話であることは一目瞭然です。それゆえに、夫に非がある一方的な描き方になっています。
先の安藤演じる浮気DV夫・卓也のみならず、お笑い芸人の藤森慎吾演じるモラハラ夫をはじめ、支配的な言動や愛情の履き違えなど人妻たちを悩ませる夫たちばかり。それが婚外性交の免罪符となるのは短絡的すぎますが、話し合いを避けて物事を穏便に進めがちな日本人女性の特徴を捉えているとも言えます。また、多かれ少なかれ夫たちに不満を持つ日本の妻たちにとって、感情移入できる人物がいそうです。
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