感染で中止相次ぐ演劇「チケット返金条件」の実際 白鸚「ラ・マンチャの男」観劇が「見果てぬ夢」に?
コロナ禍の影響を受けている業界は多い。飲食業、運輸業、宿泊業等はとくに大打撃を受けている。加えて演劇界への影響は計り知れない。演劇は演じる者と観る者が同じ空間・同じ時間にいて成り立つ芸術なので、コロナ禍の影響を強く受けている。ネット配信等の試みと並行して、一時は完全休演していた各劇場も感染対策を取ったうえで開演し始めていたが、オミクロン株の強い感染力により陽性反応が出る公演関係者が相次ぎ、中止を余儀なくされている。
その例はいくらでもあるが、例えば、1月には市川海老蔵主演の新作歌舞伎「プペル~天明の護美人間~」(新橋演舞場1月3~20日)で19日、20日の最後の2公演が中止となり、またその直後に予定されていた海老蔵企画公演「いぶき、」(新橋演舞場21~23日)の5公演すべてが中止となった。最近では、古川雄大主演の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」の大阪公演(COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール2月25~27日)の全5公演が中止となっている。
演劇は出演者のほか、音楽、衣装、大道具、小道具、照明、客席係など大勢のスタッフで開演を迎えるものであり、中止となれば、その損失は計り知れない。劇場の手配に加え、出演者、スタッフの多さからスケジュール調整は難しく、追加公演も容易ではないのであろう。しかも追加公演を決定してもまた中止では目も当てられない。コロナ禍で演劇はリスクの大きいビジネスになっている。
開演の1時間前に中止決定したことも
また観客にとっても観劇は不安要素を残すものとなっている。例えば、「ラ・マンチャの男」が初めてコロナ禍で中止となった2月8日18時の公演では、中止決定は開演の1時間前だった。すでに観客が移動中あるいは劇場付近に到着している時刻だ。人気の舞台だけに鉄道や飛行機で遠路から来て、都内に宿泊予定だった観客もいるだろう。チケット代は返金されるが、それらの費用は補償されない。
コロナ禍や天災などは興行主の責任ではないが、通常、チケットの裏側に興行中止の場合は払い戻しする旨の規約(約款)が書いてあり、代金は返金される。ただし、「額面以上の補償はしない」「旅費等は補償しない」等としているのが普通だ。そのために劇場への移動費や宿泊費などは補償されないと考えておいたほうがいい。
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