感染で中止相次ぐ演劇「チケット返金条件」の実際 白鸚「ラ・マンチャの男」観劇が「見果てぬ夢」に?
10年ほど前にオペラ上演の際のオーケストラの指揮者が代役となり、その指揮者が「格下」であったとして、観客が裁判を起こしたことがある。代役の理由が病気や事故ではなく、ダブルブッキングだったということで裁判になったようだが、原告敗訴となった。
返金方法に松竹と東宝で違い
返金のための作業のコストも膨大だろう。大劇場の定員は1500~2000席ほどだ。もし満席の10公演が中止になれば、1万5000~2万件の返金処理をしなければならない。
この返金方法、松竹と東宝で比べると差があるのも興味深い。窓口購入の場合は、購入者情報が興行主にないだろうから、窓口で返金か、チケットを郵送してもらって後日返金等の面倒な手続きになる。しかし、ネット予約が一般的な今日、興行主のチケット予約サイトで登録し、クレジットカード決済をしているのであれば、クレジット会社経由で口座に返金すれば済む。松竹(チケットWeb松竹)はそのスタイルだ。観客からの申し出も不要だ。
しかし、東宝は自社の予約サイト(東宝ナビザーブ)で購入した場合でもネット上の「払い戻し入力フォーム」で住所・氏名・メールアドレス・予約番号・公演日・座席番号を入力する。東宝がそれを確認後、記載の住所あてに「払出証書」が郵送される。それを郵便局に持参して現金に換える。しかも、「払出証書」が届くのは、2月公演「ラ・マンチャの男」の場合、4カ月後の6月になるという。
舞台芸術の良さは、空間と時間を演じる者と観る者が共有する臨場感だろう。舞台ゆえの奥行きも映画にはないものであり、筆者は、回り舞台やセリなどを使った舞台転換にもワクワクする。しかし、コロナ禍で演劇界は受難の時代だ。いったいこの受難はいつまで続くのだろうか。
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