瀬地山「教育長が意図して差別したらクビです」
森:私はそう思ってはいないので、追い詰めたということはないと思っています。逆にどうして追い詰めたことになるのですか?
瀬:「食事を作るのはお母さんですから」との発言は、その人たちから逃げ道を奪うことにならないでしょうか?
森:いや、「たとえばお母さんですから」っていう……。
瀬:「たとえば」とはおっしゃっていませんが。
森:でも、そのつもりで言ってるので……。
瀬:「つもり」が問題なのではなく、その発言の持つ効果・結果です。
森:自分の教育界の中でも、女性で校長になるということの厳しさ、これはしみじみと実感しております。ですから自分の言葉の中には絶対あってはならないと、つねに自覚はしていたのですが、しかしあのPTAというと、どうしても頭の中にそういう認識のなさが出たな、と深く反省しています。特に食事の話だったので。事前にお母さんたちが非常に多いです、という話もありまして。
瀬:ご自身が「PTAや食事に関することはお母さんの仕事」という刷り込みがあるとおっしゃっていることになりますね。母親が多いからといって、母親の役割だという発言をすることは許されない、ということは指摘したとおりです。父子家庭はどうすればよいのですか? また不本意ながら食事作りに縛られる女性たちに対して、抑圧的であるということはおわかりいただけますか?
森:いや、それがわからないんです。ごめんなさい。でも抑圧してるつもりはまったくなくて……。
瀬:「差別を意図している」とは申し上げていません。教育長が意図して差別したらクビです。普通、意図して差別する人は「自分たちこそが差別されている」と言うのです。ナチスもKKK(クー・クラックス・クラン、アメリカの白人至上主義団体)も在特会(在日特権を許さない市民の会)も同じ論理です。「食事を作るのはお母さんですから」という発言は、不本意にも食事を作り続けている女性から選択肢を奪います。「仕方ないのか」と。それを渋谷の教育を代表する立場で壇上からおっしゃっているわけです。「お母さんですから」と、その人に向かってダメ押しをしていることになります。
森:(沈黙)まったくホントに、そういうダメ押しをしたつもりはありません。
瀬:つもりがないのはわかっていますが、結果に対する想像力すらないとしたら、また同じような発言が出ます。まだおわかりいただけませんか? これが抑圧的だということが。
森:ごめんなさい、よくわからないです。
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