「料理はお母さん」発言の教育長を直撃 日本のPTA、やっぱり変です【PART2】

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だからこそ、もともと問題となった発言について、研修会の場で「それは性差別です」と指摘したときに、「お父さんも、あと、おばあちゃん。うちはおばあちゃんでした」と答えて、回答になったと思えるのでしょう。PTAの世界では、普通「保護者」という言葉を使うはずです。

味の素のCMを批判する連載を読んだにもかかわらず、「旦那さんも手伝っているし」と堂々とおっしゃったのも同様です。これにはびっくりしました。「手伝うという発想自体がおかしい」と指摘したら、「そうなんですか?」と言われてしまい、こちらも「どないすりゃええねん」と頭を抱えてしまいました。

「家事・育児は、手伝うのではなく、共有するもの」とあれだけ強調した文章を読んでも理解していただけないとなると、どうやって伝えればよいのやら……。

不本意ながら食事作りに縛られている女性に対して、自身の発言が抑圧的に作用しうるという点も、最後まで理解していただけませんでした。「そんなつもりはない」と何度もおっしゃるのですが、意図とその発言が持つ効果とは別次元の問題です。

人柄として悪気がないのはよくわかったのですが、このままでは第2、第3の問題発言をしてしまうのではないかと心配です。こちらがいくら説明しても「地雷のありか」をわかってくださらないので。

即「アウト!」なのは、法律の理念に反しているから

みなさんの中には「食事を作っているのは実際にお母さんが多く、聴衆にもお母さんが大部分だったとしたら、別にその発言でいいじゃないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。事実、森教育長を批判した『週刊金曜日』の記事がYahoo! ニュースに転載されたところ、保守的なみなさんからの批判で炎上していました。

やはり、問題がわかっていただけていないのです。教育の中で男女平等を推進する、固定的性役割分担を問題視する。これらは1999年制定の「男女共同参画社会基本法」という法律に基づいて、推進することが行政に義務づけられており、それ以来、もう15年間にわたり、各地でさまざまな取り組みが進められているものです。

渋谷区もそれに基づいて、インタビューに出てきた「男女共同参画行動計画(第3次)」を作成しており、その5章(35~36ページ)に「男女平等教育の推進」「性別固定観念に基づく慣習・慣行の払拭」とあります。

したがって個人としての意見ならともかく、教育長という立場で壇上から言うとなると、区の方針や男女共同参画社会基本法の理念に反した言動となり、大阪府の教育長がおっしゃったとおり、即「アウト!」。単なる揚げ足取りではなく、公の場での発言としては論外なのです。

それにしても、教育長が区の男女共同参画行動計画の、しかも教育の箇所の内容と、自身の発言との矛盾を指摘されても理解できない、とすると、個人の資質を超えて、渋谷区の研修のあり方や男女共同参画行政の軽視に問題があると考えざるをえません。専門の課や係があるほかの自治体に比べ、正規職員1人のみという渋谷区の体制は、明らかに遅れているということが今回よくわかりました。

渋谷区のような「都会」でも、男女共同参画行政に対して上層部がこの程度の理解しかないというのは、問題の根深さを象徴するように思われました。せめてきちんと訂正をし、男女共同参画に関する啓発活動をしてほしいとお願いしているのですが、その後、返答はありません

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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