3つ目の「外交とデタント」という観点においては、「冷戦時」には同時に外交や緊張緩和のための話し合いや努力が行われていたのに対して、「今回の戦い」ではロシアとの外交は近年ほとんど進展しておらずプーチンは自身への信頼を裏切る行動を続けてきている。外交やデタントは期待できないと述べています。
4つ目の観点としては、冷戦時より数段テクノロジーが進化していることが「秘密工作」の精度を大きく変化させていると主張。「冷戦時」には諜報活動、情報操作、世論操作等が積極的に行われていたが、それらの精度は低いものにとどまっていたのに対し、「今回の戦い」では現在の秘密工作はサイバー攻撃やSNS等を駆使して行われており、アメリカ大統領選にも影響を与えるほど強力になってきていると指摘しています。
今こそイスラエルに注目する理由
次に紹介したいのは、イスラエルのメディアであるHAARETZに上記と同じく2月25日に掲載されたロシアの軍事戦略研究家であるディマ・アダムスキー博士へのインタビュー記事です。
イスラエルは親米国家として有名ですが、ソ連崩壊後に技術者を中心に多くのロシア系ユダヤ人がイスラエルに移住し、現在では国民の25%にも及んでいる親ロシア国家でもあります。同国では、政治・宗教・信条等が異なる国々に取り囲まれているという危機感と、自国の地理的に不利な枠組みを超越するために、アメリカや欧州との同盟、日本・中国・韓国等アジア諸国との親密化を促進してきた一方で、民族的・宗教的にもロシアと近い存在にあるのです。
筆者は2017年3月にイスラエル国家招聘リーダーシッププログラム団長として同国を訪問し、政治家・官僚・企業家等と面談をもちましたが、同国の多様性国家としての1つの側面として、驚くほどロシア系が多く、旧ソ連崩壊時にロシアから優秀なユダヤ人の科学者や技術者を積極的に受け入れたこともあり、ロシア系ユダヤ人は現在でも研究開発を担う貴重な存在となっているという事実を目の当たりにしました。だからこそ、今回のタイミングでも、イスラエルのメディアが「今回の戦い」をどのように伝えているのかに大きな関心があったのです。
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