経産省が促す「石化再編」、その狙いとは? 米・中で新設ラッシュ、押される日本勢

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そこで国内工場の再編で焦点となるのが、複数工場が集積している千葉エリアだ。このうち、設備の新しい京葉エチレンが残るのは、間違いなさそう。同工場には丸善石油化学が55%出資しており、丸善石化が千葉で単独運営している別工場については、「停止すべき」(業界関係者)との声もあがっている。

一方、三井化学と出光興産の工場に関しては、両社が10年4月にLLP(有限責任事業組合)を設立して共同運営していることから、どちらか閉鎖される可能性が高い。

実際に工場を閉鎖するとなると、関係各社との間で費用の調整などに手間取る。そこで、経済産業省は今年度内にも過去の事例を集め、手続きの明確化、公平性の確保など、一定のルールづくりを目指す構えだ。

今回は市況回復はない?

首尾よく再編が進んだとしても、一部の川下業界へマイナス影響が及ぶことがあるかもしれない。たとえば、エチレン生産の際にできるタイヤ原料のブタジエンに関しては、将来的に不足が生じることが懸念されている。

タイヤの生産は増えており、合成ゴム各社はすでに、タイやシンガポールにエコタイヤ向けの工場を新設している。今後はそうした海外シフトが一層進みそうだ。

ただし、こうしたケースは一部に限られる。これまでは市況が低迷しても我慢していれば回復してきた歴史があるものの、「一息ついてそのままにしておくと、後々大変なことになる」と、経済産業省の茂木正化学課長は警鐘を鳴らす。

本格的な供給過剰の時期が迫る中、決断のために残された時間はそう多くない。

(「週刊東洋経済」2014年11月22日号<17日発売>掲載の「核心レポート02」を転載)

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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