リクルートでは、そうしたシリコンバレー流の手法から、もう一段踏み込んだプロセスをとる。石山氏の話は、とても興味深い。
「リクルートでは、“顧客開発”の前に、さらに、“WILL”を育む“自分開発”のプロセスがあるのが特徴。“自分開発”を経て“顧客開発”を行い、最終的に“製品開発”を行う。この一連の流れができている」(石山氏)。
リクルートでは、社員のやる気を引き出す人事制度として「Will-Can-Mustシート」というツールを導入している。「Will」は、1年後や2~3年後の自分がどうなりたいのかという意思、「Can」は、自分の強みや能力開発、「Must」がミッションとなる仕事を指す。それぞれの社員がこのシートを作成し、上司との面談を通じて、成長とキャリア形成をする。
つまり、リクルートには、石山氏が言うところの破壊的なイノベーションを生みだす源泉である“WILL”を育む文化、組織、制度がすでにあるというのだ。
世間一般では、生まれながらに特別な才能や精神を持っている人こそが起業家となると考えられがちだ。だが、石山氏の考えは違う。
各メンバーが“自分開発”をし、“WILL”の延長線上こそに、破壊的なイノベーションがある。そうしたプロセスを踏むことで、イントラプレナー(社内起業家)になり、アントレプレナー(起業家)になっていくというのが石山氏の考えだ。そのプロセスを育む人材育成制度が保証されているのがリクルートの大きな文化であり、特徴だと主張する。
「歴史を振り返ると、コンピュータやインターネットのサービスがどんどんユーザーに身近なものになった。その流れから見ても、今後は、より多くのアントレプレナーが後天的に生まれていく時代になるだろう。そこを育むカルチャーがリクルートにあり、成長した一人ひとりから破壊的なイノベーションが生まれていく」(石山氏)。
CameranなどMTLのサービスは、数百万人以上ものユーザーがいるとはいえ、リクナビ、ゼクシィなどのリクルートの既存事業に匹敵するほどのインパクトのあるものは、まだ生み出せていない。RITという新組織体制になったのは、2014年4月なので、まだ途上というところだろう。
インタビューを通して、石山氏が何度も口に出した2つのキーワードが「WILL」と「オープンイノベーション」だ。リクルートの起業家精神と世界最高峰のノウハウが、オープンイノベーションにより融合し、破壊的サービスが生み出せる日ははたしてくるのか。
世界のユーザーがその答えを出す。
(撮影:大澤 誠)
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