初試算!朝の電車「激コミ区間」ランキング 東名阪で、朝に乗客が集中するのは?

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他の2つの交通圏と比べて、京阪神交通圏の集中率は低めに推移している。同交通圏で記録された集中率を見ると、最多は南海電気鉄道の高野線(こうやせん)の33.2パーセントと、最少はJR西日本関西線の緩行電車の17.0パーセント、平均は25.3パーセントと、いずれも三大交通圏のなかで最も低い数値を記録した。時差通勤、通学や多様な勤務形態などが普及しているからと考えられる。

高野線や近鉄南大阪線は列車本数多く、混雑避けやすい

集中率1位の高野線、そして2位の近畿日本鉄道南大阪線とも最混雑時1時間以外の混雑率が30パーセント台前半であるから、時差通勤、通学は有効だ。概して集中率の高い路線では日中ともなると輸送力を調整する目的で列車の運転本数が減らされる傾向にあるが、高野線や南大阪線では日中も列車が比較的多く運転されていて利用しやすい。その意味でも最混雑1時間を避けて利用する価値は十二分にある。

いっぽう、集中率が最も低い関西線の緩行電車は珍しい特徴をもつ。混雑率を見ると、最混雑1時間では130.6パーセントであるなか、最混雑1時間以外では38.6パーセントと大きく低下している。首都交通圏や中京交通圏で見られたように、集中率の低い路線は終日を通して利用者が存在するため、最混雑時1時間以外の混雑率は高くなりがちである。関西線の緩行電車の場合、集中率は低いにもかかわらず、時差通勤、通学も有効という一見矛盾した特徴を備えているのだ。

なぜこのような現象が生じるのであろうか。輸送力が最混雑1時間には不足気味で、最混雑1時間以外では反対に過剰となっているからだと考えられる。要は最混雑1時間では列車を増やせばよいのだが、同じ線路を行く快速電車との兼ね合いで難しい。いっぽう、最混雑1時間以外では列車を間引こうにも、日中の運転間隔が現状の15分よりも広がるとあってJR西日本は決断できないようだ。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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