中国勢と同質競争をやっても意味がない、シャープの太陽電池事業“生存策”
--海外展開は原則「地産地消」(現地生産、現地販売)にしていきたいとシャープは言っていた。そうなると太陽電池セルの生産もアメリカに移すのか。
その計画はない。太陽電池モジュールなら、大きくて輸送費も重いため、現地生産に移すメリットがある。実際、シャープはすでにテネシー州に年産160メガワットのモジュール工場も有している。しかし、太陽電池セルはたかだか数センチ角で輸送も楽、必ずしも需要地で作ることだけが効率的になるわけではない。
--薄膜太陽電池事業の現状は。
10年4月に立ち上げた堺の薄膜太陽電池工場はフル稼働で、新規案件も順調に決まってきている。7月に発表したタイの太陽光発電所向け、米国でもユーラスエナジーが建設する施設に加えて複数の大型案件が決まっている。すでに見えている受注を積み重ねるだけでも、来11年の工場生産能力の7~8割は埋まる。
--ただ、それは当初よりもずっと低い能力での稼働。現在は年320メガワットの薄膜太陽電池の生産キャパシティだが、2年前の会社計画に従えばその倍の能力になっていたはず。もともとの計画を狂わせた要因は何なのか。
1つは、思ったよりもシリコン価格が下がって結晶系太陽電池に優位性が移ったというのがある。もう1つは認知度の問題で、どの国の顧客もこれまで何メガワット設置したのか、という実績を重んじるところがあり、そうした実績の蓄積は薄膜の場合まだまだだ。
--シャープが薄膜太陽電池へかける意欲も後退しているのか。
そこは変えていない。薄膜太陽電池への注力姿勢は維持する。シリコンがどうしてもコスト上のネックとなる結晶系と比べて、薄膜は技術開発次第でさらに変換効率を高められ、コストをさらに低減できる。