日本人は世界でカモにされ、なめられている--『管見妄語 大いなる暗愚』を書いた藤原正彦氏(数学者、エッセイスト、お茶の水女子大学名誉教授)に聞く
大ベストセラー『国家の品格』から5年。「時代遅れの日本男児」(山本夏彦氏)は健在どころか、スゴみを増す。雑多な俗事から隠された本質を突く「透徹した目」は今や縦横無尽に働く。
──旧聞ですが、『国家の品格』で、デリバティブを時限爆弾と断定していました。
市場原理の申し子といえる金融派生商品がデリバティブというもの。これは「最大級の時限核爆弾」であり、「いつ世界経済をメチャクチャにするのか、息をひそめて見守らねばならない」と書いた。リスク率4%として、1000兆円の不良債権が瞬時に出てくると計算したが、実際そのとおりになった。
──なぜそう判定したのですか。
リーマンショック後、証券会社の支店長から、どんなシグナルでわかったのかと問われた。また、ある信用金庫の理事長には、読んだおかげで、超優良と勧められたヘッジファンドを買わないで済んだと感謝された。
その根拠は明快だ。あのとき、デリバティブの世界残高が1兆円の2・5万倍といわれた。10年前の25倍に上り、2京5000兆円とかで、数学者ですら呼び名がわからない単位にまで膨らんでいる。これは異常以外の何物でもなかった。
──井の頭公園を望む億ションの仕事部屋は、このベストセラーの印税で買い求めたとか。
株とか債券とかいった動産では、いつも気を使うことになる。だから、財産は不動産にしている。その前から物色していたが、本がヒットして収支トントンになった。