日本人は世界でカモにされ、なめられている--『管見妄語 大いなる暗愚』を書いた藤原正彦氏(数学者、エッセイスト、お茶の水女子大学名誉教授)に聞く

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


──この本には「米中不可侵条約」の可能性も、とあります。

歴史的に前例がいくつもある。ヒットラー・ドイツと、ソ連によるポーランドの分割がいい例だ。ポーランドは両国と不可侵の条約を結んでいたが、ドイツとソ連がいつの間にか分割の秘密協定を結ぶ。それを背景に1939年9月1日にドイツがポーランドに進攻し、2週間後にソ連も攻め込んで統治される憂き目を見ている。アメリカと中国が不可侵条約を結んで、日本を半分ずつ統治することもありうるのではないか。

もともとアメリカと中国は気質が似ている。国益は手段を選ばず徹底的に追求する。戦争も辞さない。喜怒哀楽が激しいと同時に、はっきり物を言って遠慮しない。日本人は違う。日本人はむしろイギリス人に似ている。

──では、どうすれば。

ヨーロッパのほうと仲良くする。昔のように日英同盟を基軸にするのがいい。イギリスと仲良くしていると、ア
メリカも手荒なことはできない。イギリスが味方となれば、オーストラリアやニュージーランド、カナダ、それにインドなど、英連邦諸国とも仲良くできる。

アメリカに文句言うときは太平洋を渡っていくとなめられるから、イギリスと話をそろえたうえで、大西洋から渡っていく。これが21年までの日本のやり方だった。

(聞き手:塚田紀史 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年10月23日号)

ふじわら・まさひこ
1943年、作家・新田次郎と藤原ていの二男として旧満州新京で生れる。東京大学大学院数学科修士課程修了。米コロラド大学助教授などを経て、お茶の水女子大学教授。ユーモアと知性に根差した独自の随筆スタイルを確立。著書に『若き数学者のアメリカ』『天才の栄光と挫折』『国家の品格』など。

『管見妄語 大いなる暗愚』 新潮社 1365円 189ページ

  

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事