量的緩和の効果はあるのか、ないのか FEBの量的緩和第3弾終了で、改めて問う

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もう少し正確に言うと、量的緩和と世間で広く呼ばれている金融政策の効果は、その政策に対する市場における投資家(銀行を含む)の受け取り方によって決まるから、実際に金融政策として中央銀行が何を行うかと、その効果は異なるのだ。いわば、金融政策のファンダメンタルズは、「金融政策効果の評価」という「市場価格」とは無関係なのだ。

投資家が、これにより、株価が上がると思えば、株価は上がるし、これにより、円が値下がりすると思えば下がるし、これで景気が良くなると思って銀行が貸し出しを増やせば、マネーサプライは増える。逆に言えば、ベースマネーをいくら増やしても、マネーサプライが増えない可能性は十分にある。

したがって、金融政策として何を行うかは、実際に何を行っているか、それ自体とは関係なく、投資家たちの受け止め方によってすべて変わってしまう、より正確に言えば、変わるのではなく、そこで初めて金融政策の意味が決まるのだ。この点では、日銀・黒田総裁の異次元緩和、量的質的緩和は、量的質的というよりも異次元であると投資家に受け止められたから効果を持ったのであり、これが副作用から悪い結果をもたらすようになるかどうかも、受け止められ方によるのである。

今回のFEDの発表は、市場にどう受け止められたのか

したがって、今回、FEDが量的緩和を終了したのか、継続しているかは、投資家たちの認知によるのであり、それが悪いことなのかいいことなのかも、認知に基づく行動によって変わってくるのだ。

結局、株式市場としては、発表直後の下げを消すように動いたことから、ほとんど意味がないことになり、為替は大きくドル高に動いたから、こちらでは意味があったことになるのである。動きが違うから、どちらかが間違っているのではなく、金融政策のファンダメンタルズは関係ない、という真実が明らかになったのである。

同様にして、日銀が大量の国債購入を行い、政府が歳出を拡大するのは、実質財政ファイナンスに当たるかどうかは、投資家の認知によるのであって、それ以外は関係ない。

さらに言えば、メディアがどう言おうと、投資家の反応に乗るのであって、米国では、量的緩和の定義について、米国民の4分の3以上が正しい認識をもっていなかったという衝撃的なニュースに対して、ある有識者が、ディーラーたちが正しく認識していれば関係ない、と答えたのは、半分正しい。

半分間違っているのは、ディーラーたちの金融政策のファンダメンタルズとしての意味、実体経済への意味の認識は正しくない、ということで間違っており、さらに、それが正しいか正しくないかは関係ない、という意味でも間違っているのだ。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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