日立は今期も最高益、絶好調に死角は? 過度な依存避ける地道なリスク回避策が奏功

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上期の業績を受けて日立は、15年3月期の業績予想も上方修正。売上高は、前年同期比1.2%減の9兆5000億円(従来予想は9兆4000億円)、営業利益は同8.9%増の5800億円(同5600億円)に引き上げた。14年3月期に23期ぶりに更新した過去最高営業益を2 期連続で更新する見通しだ。また、営業利益率は6.1%と、計画通りにいけば、1991年3月期(同6.5%)以来24年ぶりに6%を越えることになる。

下期以降もインフラ事業は活況が見込まれる。たとえば、鉄道事業では10月初旬に英国で近郊車両234両70編成と長期保守契約の優先交渉権を獲得。エレベーターについても、中国の新設昇降機市場は、13年度の45万5000台が、15年度には56万台に膨らむ見通しで受注の拡大が期待されている。

 世界の強豪と肩を並べられるか

足元に不安材料がないわけではない。日立では、南欧諸国を中心とした金融不安やウクライナ問題に伴いロシアや欧州で景気低迷が長期化すると見ている。これに伴って中国や東南アジアで経済が停滞すれば、中国での建設機械や、東南アジアで家電や社会インフラの受注に影響があるとしている。ただ、中国で好調なエレベーター事業について、日立の中村豊明執行役副社長は、「中国経済全体は落ちているが、(取引先である)大手デベロッパーは動いている」として、同事業への影響はないと見ている。

日立は13年度を初年度とする中期経営計画で15年度に売上高10兆円、営業利益率7%超の目標を掲げている。5月に行われた中期経営計画の進捗状況説明会では、アナリストから「7%の山を越えるのは大変ではないか」という声も上がっていた。だが、今回営業利益率6.1%(前期5.5%)になったことにより、着実に7%に近づいていた。今回の決算説明会でも中村副社長は、「中期経営計画で7%超を目指すために(第3四半期以降も)増加させたい」と意気込みを語っている。

日立の東原敏昭社長は今年6月に開かれた株主総会で、「7%超という利益率(の目標)は、グローバルメジャープレーヤーと比べると低い。早く二ケタの利益率を目指したい」と話している。15年度の目標である7%超に近づいたとはいえ、日立が目指す米GEや独シーメンスなどの強豪に追いつくには一層の取捨選択が必要になってくる。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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